音楽制作システムの変遷

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70年代はアナログの時代。1957年に8CHのマルチレコーダーが、1967年に16CHのマルチレコーダーが誕生、その後すぐに各社から24CHのマルチレコーダーが発売された。スタジオには48チャンネル程度のAPI,AMEC、MCI、QuadEight、SSL、NEVEなど多種多様な海外製コンソールがあった。

マスターレコーダーはアナログテープしか選択肢は無かったが、テープマシンの選択、磁束密度やバイアスの調整、テープの種類、録音レベルなどでものすごく音が変わるのでそのあたりの選択や所作はエンジニアのこだわりだった。

リバーブはEMTの鉄板エコー、AKGのスプリングリバーブ等を使用した。エコールーム(実際にコンクリート壁の部屋や非常階段、トイレなどで音を鳴らしてマイクで録る)ことも少なくなかった。

アナログマルチで録って
SSLやNEVEコンソールでミックス
ファイナルミックスはアナログテープ

 

80年代はデジタル時代の幕開け。1978年に世界で初めてのデジタルマルチが3Mから発売、1982年にはソニーのPCM3324が、その後、三菱のX800が続いた。コンソールは大型のアナログコンソールが主流で、特にSSLとNEVEが双璧となった。

マルチトラックレコーダーもマスターレコーダーもアナログからデジタルへ移行した。無調整で均一な性能を保証するデジタルの登場で調整次第で音が変わる事は無くなったがテープの選択は重要だった。

CDが登場した1982年以降はCD製造工場にソニーのUマチックで納品するためどのスタジオも最終マスターはソニーのUマチックだった。(最終工程のすぐ前までアナログテープを使用しても納品時はソニーのUマチック)

リバーブはエコールーム(実際にコンクリート壁の部屋で音を鳴らしてマイクで録る)は日本ではほぼ絶滅、EMTの鉄板エコーが標準となり、エコーの前にテープレコーダーのヘッド時間差分のプリディレーをつける手法も流行った。

PCM-3348で録って
SSLやNEVEコンソールでミックス
ファイナルのミックスはUマチック

 

90年代はDAW時代の幕開け。80年代にはシンクラビアやフェアライトCMIなど数千万円のDAWもあることはあったが、一部の有名ミュージシャンしか使用出来ない価格だった。(1984年のTOTOのアルバム「FAHRENHEIT」ではシンクラビアもsf=100KHzで使用した。)1987年にDigiDesignからSound Tools+Sound Designerが発売され、後に(1992年)ProTools1になった。先進的なスタジオには導入されたがプロ機材にしては価格が安過ぎて導入に二の足を踏むスタジオも少なくなく、特に大手のスタジオではほとんど普及しなかった。逆にアーティストやエンジニアによるプライベート・スタジオの構築は比較的容易になった。

2000年に入ると急速にProToolsが普及(ソニーがプロオーディオの分野から撤退し、2004年にはすべてのメンテナンスサポート終了も起因)、スタジオ標準のレコーダーはProTools一色となった。ProToolsはレコーダーでもあり、編集も視覚的で楽、豊富なプラグインがあり各種アウトボードの機能も持ち、ミックスダウンも可能。という訳で各スタジオとも必須のスタジオ機器として一斉にProToolsを導入した。(一部のスタジオでは2000年に発売されたNuendoを導入 )

しかし、この時代は作曲家や編曲家は一部を除き、ほとんどがデジタルパフォーマーやロジック、Cuebaseなど、シーケンサーと呼ばれるソフトを使用していた。オー ディオも録音、編集が可能で、EQやコンプ、ピッチ変換など、スタジオのProToolsとほぼ同じようなエフェクトもかけれるが主な理由はMIDIの機能が格段に優れていたからにほかならない。
こういったDAWを使用する事によりかつてのように山のよう な量のシンセをスタジオに運ばなくても自分で録音出来るので制作側はこういったシーケンスソフトで作業し、プロのミキシングエンジニアがシーケンサーで宅録された素材を引き継いでミックスダウンをする事も珍しくなくなった。

業務用のスタジオでもアーティストやエンジニアによるプライベート・スタジオでもProToolsは急速に普及、1997年のProTools24、2000年のProTools HD192登場でデファクトスタンダードとなった。

CD製造工場への納品もCDR納品が主流となった。

リバーブも高品位なリバーブがプラグインとしていくつも提供されアウトボードのリバーブはだんだんと姿を消す事になった。

プロツールズで録ってプロツールズでミックス。すべての処理をプロツールズ内で行う

 

ProToolsがデファクトスタンダードとなり、収録からミックスまでほとんどの処理をプロツールズ内で行うが、「何かが足りない」あるいは「暖かみが....」とか、悪く言うと「デジタル臭さが」とか、さまざまな理由でファイナルミックスの収録にアナログのテープレコーダーを使用するエンジニアも少なく無かった。特にメジャーアーティストを担当するエンジニアにその傾向が強い。

アナログテープに録音すると機種や調整にもよるものの、一般にオリジナルの音源よりもより中低域がファットなったりソフトクリッピングによるディストーションが加わりハーモニクス(倍音)が増加、ピークを抑え、テープ特有の暖かみも加わり耳に心地いいサウンドを得ることができると考えられている。端的に言うと「音を変える為のツール」としての使用。この場合、一旦テープに収録したものを再度ProToolsに取り込む。

アマチュア(インディー)の作品を除き、マスターはDDPでプレス工場に送付する。(CDR納品でもOKの工場もあるが大半はDDP納品を推奨)

プロツールズで録ってプロツールズでミックス。ほとんどの処理をプロツールズ内で行うが、外部機器に収録する。

 

近年では全く逆の発想で「モニターしている音を変えないでありのまま記録するツール」として 1bit Recorder を使用するエンジニアも増えてきた。

世間的に「ハイレゾ」が追い風の中、44.1KHz16bitのマスターをアップサンプリングして 「ハイレゾ」などというアコギなやからもいる中、まじめに本物の 「ハイレゾ」を追求するアーティストやエンジニア達だ。しかし、その多くは96KHz/24bit、あるいは192KHz/24bitで収録。予算のあるプロジェクトのみアナログコンソールによるミックス。

メジャーなマスタリングスタジオでもanns soundやサイデラ・パラディソなどMR2000Sをマスターレコーダーとして常設しDSDアナログマスタリングが可能なスタジオもあり、増加傾向にあるがまだまだ少ない。

プロツールズで録ってアナログコンソールでミックス、マスターは1ビットレコーダーに収録する。

 

残念ながら現時点で1ビットで収録しそのままミックスして1ビット作品としてリリースするタイトルはきわめて少ない。ネックとなるのは編集の難しさ。演奏をそのまま、ただただ曲頭と曲終わりの処理だけするならAudioGateで可能だがEQをかけたり異なるティクをつないだりは基本的には「出来ない」。大きな声では言えないがPOPSの世界ではパンチイン/アウトによる差し換えは当たり前、クラシックやジャズでもかなり高度な編集を必要とする事は日常茶飯事。ソノマやピラミックスなどでも5.6MHzの編集は出来ないし、2.8MHzでも編集する部分のみはPCMに変換して編集という事になる。AudioGateでPCMに変換してProTools上で編集は出来ない訳では無いが結局デジメーション(間引き)処理をするので本来の1ビットの良さを生かしているとは言えない。

1BITで録ってアナログコンソールでミックス、マスターは1ビットレコーダー、AudioGateで編集する。

 

マルトトラックの5.6MHz1ビットレコーディング自体はMR2000Sを複数台接続する事ですでに可能になった。8CH程度のDSDレコーディングを経験済みのエンジニアも少なからずいる。アナログコンソールに接続すれば音量も音質もコントロール可能。→実際の収録例

2010年に「研究発表」という形で公開された「Clarity 」はマルトトラックの1ビットDAWという位置づけ。ほぼ同じエンジンのAudioGateはVer.3まで進化したが「Clarity 」は未だVer.1のまま、今も世界に3台しか無い。しかし、G-ROCKS STUDIOで有料で試用する事は可能。これは福音だ。5.6MHz 8CHのDSD入出力が可能なDAW。一切のデジメーション(間引き処理)を行わないDSD NativeのDAW。 音は最高だ。 →実際の制作例

1BITで録ってアナログコンソールでミックス、マスターは1ビットレコーダー、Clarityで編集する。

 



<各種 1bit Recorder>

 

KORG
MR-1
MR1000
MR2000S BK
Clarity
2006
2007
2009

2010


 

 

TASCAM
DS-D98
DV-RA1000
DV-RA1000HD
DA-3000
2001
2005
2006

2013


 

WASEDA
ヤマハDR8 改
SONY3324 改
WSD ADA + FOSTEX D
WSD ADA + TDIF
VC21

1985
1992
1999・2001

2006


 

OTHERS
SONOMA 32
Pyramix
GENEX
GENEX
1994
2002
2002

2003

      .
Yamaha mLAN
シャープ
aiQualia I88A-U2
SONY PCM-D100
2004
2006
2013(開発進行中)
2013


<スタンダード>

 

ProTools
Sound Tools+Sound Designer AudioMedia+Sound Designer II ProTools-1 PtoTools 24 ProTools HD192 ProTools 11
48K/16 bit 48K/16 bit 48K/16 bit 48K/24 bit 192K/24 bit 192K/32 bit
1987 1988 1991 1997 2002 2013

 


 

Multi Truck Tape Recoeder
8Tr 16Tr -- 24Tr Digital 24Tr Digital 24Tr Digital 32Tr Digital 48Tr
AMPEXなど AMPEX、STUDERなど 3M DMS SONY PCM3324 MITSUBISHI X800 SONY PCM3348
1957 1967 1978 1982 1986 1990

 


 

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