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□ProTools 中級 


「みんなProToolsだしぃ、買ってみたものの、何がどうなってんのかさっぱり」超初歩から勉強したいけどどうしたらいいかもさっぱり....とは言え1からインストラクション読むってのもなんだかなぁ。以下はそんなミュージシャンの為のプロツールズ超初歩講座。1200ページ近くあるインストラクション(Reference Manual)をざっくり100分の1以下にまとめているのでかなり省略している。より詳しくあるいは正確な情報を知りたい場合はちゃんと本家発売元AVID社純正インストラクションを読む事をお薦めする。


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<音圧を上げたい?!>

音圧競争(戦争)に勝ちたいですね?!ProToolsユーザーなら簡単です。マスターフェーダーにPro Toolsに元々ついてくるプラグイン「maxim 」をインサートすればOK。

使い方はいたって簡単。動かす所は2箇所のみで大丈夫。まずはCEILINGを-0.5dbにする。(このプラグインを通った音は最大レベルが-0.5dbに抑えられます。)次にTHRESHOLD、このノブを下にスライドすればするほど音圧が上がります。他はまったくいじらなくて良いです。THRESHOLDはどのくらいの値が良いのかは元の音源次第。通常のミックスなら3dbは楽勝に上がるハズです。簡単ですね!

ただし、元々の音源がカツカツにピーク振ってるような場合はちょっと動かしただけですぐ歪みますので聴きながら調整が必要です。

<音圧をもっとあげたい?!>

う〜〜〜む、音圧競争(戦争)に勝ちたい現代病ですね?!

「maxim 」の前に「EQ3 7band」「Dyn3Compresor」を入れたりして調整すればもう3〜4dbは上げられます。「EQ3 7band」「Dyn3Compresor」もProToolsを買うと最初からついてるデフォルトのプラグインです。ただし、多少のテクが必要になります。

音圧を上げる一番簡単な方法は「WAVESのプラグインを買う」です。素人でも簡単に音圧が上がります。WAVES社がL1をリリースする以前のCDとそれ以降のCDでは音圧が全く別次元です。初代のL1は今でも人気の現行商品ですがより歪みにくい後継機種 L2やL3もあります。通常のミックスから4〜6dbアップくらいなら楽勝です。

L1は過度にブーストすれば歪みます。それに高域が荒れます。さらにかけると「痛い音」に。でも、その荒らくれティストが欲しい時には最高です。その効果が欲しい為に2ミックスではなくVocalトラックにかけるエンジニアもいます。

L3は歪みにくいですが言いようによっては音は地味です。L2はその中庸といった感じです。

使い方はいたって簡単。動かす所は2箇所のみで大丈夫。まずはCEILINGを-0.5dbにする。(このプラグインを通った音は最大レベルが-0.5dbに抑えられます。)次にTHRESHOLD、このノブを下にスライドすればするほど音圧が上がります。他はまったくいじらなくて良いです。

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<音圧をもっともっとあげたい?!>

う〜〜〜む、病気ですね?!

最近、ラウドネスメーターやラウドネスノーマライゼーションが話題になり音圧競争(戦争)は収束したって事になったのかと思いきや、まだまだのようですね。

ハッキリ言って放送に関しては音圧競争(戦争)は収束しました。なぜなら、放送業界は2012年より、ITU(国際電気通信連合)の提唱する規格を元に、ラウドネスノーマライゼーションを行っています。それもかなり極端な値で日本では-24 LUFS ±1ってめちゃめちゃ小さい音です(欧州でも-23 LUFS ±1)。

大昔のCDでもクリア出来ない値です。試しにLongTermモードで計ってみたらビートルズのHardDaysNightは-11LUFS TOTOのAfrica で-16LUFSです。 比較的最近のだとマイケルジャクソンのThis is itは-13LUFS 、マドンナ様のiluminatiで-12LUFS でした。ちなみに TOTOのAfricaは1983年の名作 。マスターはAMPEXのハーフインチです。16LUFSはApple Musicのラウドネス基準値。

ビートルズのHardDaysNightが-11LUFSと古い曲の割にデカイのはモノラルなのとテープによるソフトリミッティングのせいかも。

最近のCDはCDが出始めた頃に比べれば音量感ではほぼ倍ですね。ラウドネスノーマライゼーションされちゃうと近年の作品はのきなみ6dB〜ヘタしたら12dBも(もっとかも)レベルが下げられちゃいます。せっかくバッキンバッキンにレベルを突っ込んで大迫力化したハズのものもNHKのニュースと同じ音量感で放送されます。そのかわり一般家庭でCMになったとたんにめっちゃでかい音であわててボリュームを下げるっていう動作は過去のものになりました。

結局、単位時間あたりのエネルギーが大きい程レベルを下げられちゃうので音圧を稼ぐためだけの処理は全部無駄になり、音圧ブーストの副作用(アタックが潰れて弱く、ダイナミクスの狭くて高域がザラついただけ)が目立つ楽曲になっちゃう事態も.....。

<放送だけではない?!>

実は最近では放送だけではなく配信でもラウドネスノーマライゼーションがあたりまえに行われています。Youtubeでも、AppleMusic、Spotifyとかでもラウドネス検知を行い、Youtubeでは-13LUFSにレベルが揃えられAppleMusicやSpotifyは16LUFSでレベルが揃えられます。放送の-24 LUFS ±1よりはマシとは言えそれでもかなり小さな音量です。

日本ではまだCD盤が健在ですがワールドワイドなマーケットを考えるとCD盤は絶滅危惧種です。AppleMusicなどでの配信を考えてる方はミックスやマスタリングのやり方にも気を使うべきですね。

<意味無いの???>

音圧を稼ぐ事は意味が無いのか?と言うと実は意味があります。人間の聴覚は、相対的に大きい方の音を『良い音』と感じるのです。音響機器やSPのチェックで元々がまったく同じ音源を再生した場合、少しでも音の大きい方を『良い音』と感じるのです。

ただ、CDの場合、収録出来るダイナミックレンジは16ビットで表現される最大数、約96dbしかありません。

トレードオフって言葉があります。一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことです。96dbのダイナミクスしか表現出来ないCDに収録する曲の音圧をむやみにあげると何が起こるか?

音圧を上げるというのは、結果的に正弦波を矩形波に近づけることになり、矩形波の特徴である奇数倍音が可聴域に現れ、甘い音色の高音は消え、痛い音が増え、当然のように歪みを増し、オーバーコンプレッションした分ダイナミクスもアタック感も失う事になります。

しかも、Apple Storeで配信とかになると どんなに努力して音圧を上げたところで、ピアノソロをただただノーマライズしただけの音源の聴感レベルに勝てるかどうか微妙です。生音で聴けば圧倒的にデカイ音のドラムやエレキベース、エレキギターが演奏してるのにCDっていうメディアの中に入れば生のピアノの方がデカく感じる事もあるっておかしいですよね?!

<じゃぁどうする?!>

でわ、どーすれば音圧を少ないデメリットで上げられるのか? やっぱミックスの時から秀逸なメーターを使う事が一番の近道。最近のProToolsは初期設定でメーター表示が色々選択出来ます。その中でマスターフェーダーのメーターはマスタリングエンジニアのBob Katzが提唱したKメーターがお薦めらしいです(K12、K16、K20 がソレ)。ProToolsの他にもStudio One 2(Presonus) 、Ozone (iZotope)、T-Racks (IK Multimedia)などにも搭載されています。

マスタリング時に副作用の多い「過度の音圧上げ処理」をしない為にミックスダウンの際に適切な処理をその副作用を実際に感じながら行うためです。最終マスタリングの為にまだ上げられるマージンを10db残しておくなんてのはダメダメです。10dbも上げるとせっかく苦労して創ったミックスバランスがまったく別物になっちゃいます。

ちなみに僕の場合、ミックス後半にはマキシマイザをインサートしてミックスします。そうすることでマキシマイザの副作用も体感しながら補正してミックスが出来ます。

メーターはKメーターよりもっと数値で分かりやすいWAVESやOZONのラウドネスメーターを使って大きくても-13 LUFSくらいを目標にミックスします。ま、もともとあんましメーターは見ませんが....。

<WAVES WLM+>

WAVESが誇るWLM。すごく信頼できます。オススメです!!!!!

-13 LUFSくらいを超えるレベルをつっこむとSHORT TERMの数値は赤く点滅します。−7とかだと歪みに関してはかなり注意深く検聴しないとめちゃヤバイです。

<iZotope Insight>

OZONのラウドネスメーターなら時間経過のラウドネス変化や周波数特性、サウンドフィールドも見れます。

ただし、デカイので片隅にちょこっと表示って訳にはいきません。


<編集後記>

「muーさん、四角い波形、嫌いじゃん、どーすんの?」って 曲によりけりだと思いますよん。確かに最近はクラシックやジャズのDSDのお仕事が多いので平和な波形が多いですが、大好きなマドンナ様のCDはどれも四角い波形だし、アーティスト様が望むならクラシック音楽でもディストーションでもマキシマイザでもかけますよ。アーティスト様が望むならね。あ、もちろんクライアント様が望む時もそうなんですがその場合はアーティスト様も同じご意見という前提です。それも昇圧はある程度までミックスの時にやるですね。マスタリングの時に勝手に10dbも上げられたらわひ怒ります。みなさんもくれぐれも音圧は上げすぎないようご注意くださいね〜!! 副作用コワイですよぉ〜!!! 泥沼にハマります。

だぁかぁらぁ、わたひちゃんと言ったじゃないっすか「思い切り音圧上げたミックスをAppleやYouTubeのノーマライズ処理でまんまレベルだけ下げられちゃうと悲惨な事になっちゃいますよ」って、「配信して自分で聴くまで信じられなかった」って言われてもねぇ........。

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