応援しますインディーズ 

mu-s HOME / Study!!menu

□ ノイズリダクション

ノイズリダクションと言えば Dolby があまりにも有名。
かつてはプロでもアマチュアでも何か録音するには選択肢はTAPEしかなく、TAPEに録音する限りは必ずシャーっていうヒスノイズがあり、こいつを軽減する為に Dolby のノイズリダクションシステムDBXを使った。
プロ用のスタジオではTAPEの特性に合わやせてTAPEレコーダーを調整し、次ぎに DolbyのNRを調整するのだが、各トラック全部で1KHzの基準信号と100Hzの低域、10KHzの高域信号の録音再生、Dolby Toneと言われる基準信号の録再調整が必要で、ちっちゃな調整用ドライバーで200ヶ所以上の調整POTを慎重にあわせるため、たいがい調整に午前中1杯、午後からセッションてのが普通だった。

デジタルのレコーダーが登場してからは無調整で均一な性能が保証され、しかもヒスノイズは全く無いのでDolbyやDBXも絶滅した。デジタルテープレコーダー自体ももはや絶滅、現在はProTools等のようにコンピューターとソフトウェア、オーディオインターフェィスを用いハードディスクに記録するタイプが一般的になった。

記録機が飛躍的な進歩をした今、「ノイズリダクション」は昔とはまったく違う意味で生き残っている。記録機があまりにもクリーンになった為、逆に些細なノイズも聞こえるようになった。かつてなら「しょうがないよこのくらいは」で済んでいたノイズがそれではすまされなくなったのだ。いつでもクリーンな状況が求められる。特にハイビット、ハイサンプリングでの高音質な素材に関しては徹底的なノイズ除去が求められる。10年前だとデジデザインのオプションソフト「DNIR 」くらいしか無かったが今なら沢山のソフトがラインナップしている。以下は僕のProToolsにインストースしてあるノイズ除去ソフトウエア。メインで使うのはやはり定番のWAVESだが、低価格ながら他社に無い「目で見て画像診断、怪しい箇所を選択的に切り取る」画期的なソフトIZotopeのSpectral Repair もクラシックの一発録りなどではもはや必須のNRとなった。

.

Declicker / X-Click

プチプチやパツ、バチっていうようなノイズを取り除く。アナログレコードのスクラッチも簡単に除去。

 

Declipper / X-Crackie

レベルオーバーでクリップした音などを修復する。

 

Denoiser / X-Noise / Z-Noise

空調暗騒音や機器のノイズ等連続した残留ノイズを取り除く

 

HumRemoval / X-Hum

電源に起因するノイズ(ハムノイズ)を除去する

 

Spectral Repair
音を時間周波数スペクトログラムに表示して任意に選択した椅子の音、咳、携帯電話の音などの不要な音を削除する。

ある日、先輩のエンジニアから「素人みたいな事やっちまったよ。adat opt outをインターナルで録っちゃってプチプチノイズが...... なんとかならんかなぁ?」ってレスキュー依頼が.....。で、送ってもらったファイルを聞くとふむふむ、たしかにたくさんプチプチが....。「なんで録ってる時に気がつかないの?」って思うかもしれないが、たいがいのエンジニアはヘッドフォンでマジに聞くのは大嫌い。スピーカーで気持ちよく音楽をクリエイトする耳になっている。だからちっちゃなノイズごときはたいして気にならない事もよくあるのだ。

しかもこういったデジタルノイズはアナログレコードのスクラッチと違い波形で見ても拡大してもまったく見えない事も多い。(以下参照)

元の波形
ノイズがあるあたりを少し拡大
ガビンと拡大して見る
.    

まず元の波形を見て欲しい。どあたま、ピッタシで切らずに約1秒空けてある。これはCDプレーヤーによってはちょうどで切った場合に再生出来ないであたまが切れてしまう事がある為、若干のスペースを入れておく。コレ、プロの中では常識!!! ただし、ファイルはこのようにあたまを若干残して作成するが、そこで「シャー」って音が聞こえちゃうと興ざめ。うるさめの曲ならたいがいあたまはフェードイン処理にするが、全編静かな曲とかでは頭の無音部分でノイズプロフィールを作成して全編ノイズ除去をする事もある。(Denoiser / X-Noise / Z-Noise などを使用する)WAVESの Z-Noiseはわざわざノイズプロフィールを読み込ませなくても自動でやってくれる。Denoiser や X-Noise はまず無音部分を選択してノイズプロフィールを勉強させる(WAVESの場合はLearn、iZotopeの場合はtrain)。その後、試聴しながらThresh、Reduction等の操作肢を動かしてノイズの消えるポイントを探す。このあたりの所作はだいたいどのソフトでも同じ。
iZotope RX II Denoiserだと(たぶん超マジに計算しているせいだとは思うが)半端じゃなく時間がかかるので注意。 (結果はバッチリ)

無音部分を選んで「Learn」を押す
「試聴」ボタンを押してから「Learn」を解除
全部を選択して「プロセス」を押す
.    

この操作でファイルは飛躍的に静かになった。そうするとますますプチプチノイズが目立つ事になる。で、次、プチプチノイズの原因がデジタルのクロックに起因するってわかってるような場合はiZotopeのRX Declickerが便利。PRESETのリストから「Digital Clicks 」 を選べば良いだけっていう簡単操作!! 最近はプロのエンジニアでも細かくいじれる操作肢がたくさんあるものより秀逸なプリセットと少ないつまみの製品を好む傾向が強いように思う。(わたひは両方好きですが....)

RX Declickerを立ち上げる

PRESETから「Digital Clicks」を選択

全部を選択して「プロセス」を押す
.    

まぁたいがいの場合はPRESETのままで99%くらいはプチプチノイズが退治出来る。ただし、デジタルのクロックエラーによるノイズはなにせ数がすごく多いので残った1%だけでも気になり出すと結構気になる。しかも、耳で聞こえてるのに波形を拡大して見ても中々見つけにくい。で、次のステップに進む。他社には無い素晴らしいソフト、Spectral Repair があればかなりマジに追い込む事が出来る。

処理したい部分を選んでCaptureボタンを押す

Defortでは波形とスペクトラム両方表示

うっすらクリックの漏れが見える!!
.    

まず、処理したい部分を選んで「キャプチャ」ボタンを押す。(ただし、このソフトはたったの4秒以内しか処理出来ない。したがって、他のソフトで相当の所までやって、さらに気になる部分だけSpectral Repair が登場ってのが美しい。)キャプチャーされるとDefortでは波形とスペクトラム両方が表示される。波形を見ておおよその場所を理解してからその波形とスペクトラム表示のバランスを決めるスライダーを動かしてスペクトラムだけにしてみる。すると、そこに波形だけだと見えなかったものが見えてくる。例えば、一番右の画面、エンディングの最後の最後、ピアノの余韻の中にクリックがうっすら見える。全部をドカンと選んでリペアすると選んだ部分全体がハイ落ちするのがバレちゃうので縦線を最小範囲選択してひとつづつリペアしてプロセスボタンを押す。コレでクリックのモレは全然聞こえなくなるしピアノの余韻も不自然にならない!! もちろんクロックエラーのデジタルノイズの取り残しとかにもバッチリ使える。コレでもう少し長い時間(1曲まるまるとか)で使えて、かつもう少しクレバーな自動選択ツールとかがあれば言うことナシなんですケド.....。

ちなみに、「ノイズ探索」「ノイズ除去」はヘッドフォンが絶対有利。それも、あまり大き過ぎない音量で聴く方が見つけやすい。ついつい唄に聴き入ってしまってはダメ! あくまでクールに「ノイズを探す」耳で聞かなくちゃなんない。今の所、どんなにお金を出しても一発で楽音とノイズを完璧に分離してくれる素敵なアプリは存在しない。ま、時間の問題とは思いますケドね。それまでは最新の注意をはらって、まずはノイズが乗らないように録音するのが一番。万が一、ノイズを乗せてしまったら僕に聞かないで、まずはProならみんな持ってるWAVESで試すのがいいだろうね。TDMでも使えるから途中でパラメーターのオートメーションも出来るので細かくいじれる!! WAVESを持っていない人、WAVESを持ってるケドSpectral Repair を試したい 人、またはなにせ簡単にバカチョンで結果を得たい人、まずはiZotopeのWebからお試し版を落として使って見るといいだろう!(一度使ったらどうせ買う事になるだろうケドね、3万円くらいだしぃ....)英語の苦手な人は国内代理店(タックシステム)の山崎さんに相談してね。手もみしながら笑顔で相談にのってくれますよぉ。そういえば同じiZotopeの製品でT-pain effectってのが出てるんだけど、それはな〜んも調整しなくても唄がパフュームみたいになるエフェクト、 簡単バカチョン派の方にはお勧め。

 

除去手順 まとめ)

1)Denoiser(WAVESならX-NoiseまたはZ-Noise、iZotopeならDenoiser)で暗騒音を除去する。(ひどくなければ省略可)

2)Declicker(WAVESならX-ClickiZotopeならDeclicker)で、シンクエラーのパチパチノイズを除去

3)以上で取り切れなかったノイズをSpectral Repair で探索して削除する

4)時間を少しおいてから試聴しとりこぼしがないかどうかチェックする。

5)あんまし静かになり過ぎたのが目立つ時は短めのリバーブを少しだけ付加する。(ひどくなければ省略可)
  →WAVESのIR360フロント側が結構お勧め!!なければ何でも良いので1.1秒くらいの短めのリバーブ

以上の所作でたいがいのノイズは退治できるが、それでもどうあっても取り切れないノイズはある。パラメーターを変えてみたり、プラグインを別のと併用したりすると多少の向上が見られる。

 

補足)

私の場合、クリックを使用する場合はテンポや構成が決まった段階でクリックの出力ボリュームのオートメーションを書く。当然の事ながら、編成の薄い部分(Aメロとか)ブレークや引き延ばしはボリュームを下げ気味に、サビやソロなど盛り上がる所は聞き取りやすいように少し大きめに、曲終わりたリットの部分ではクリックが残らないようにカットしている。それだけであとの作業は格段に楽になる。ぜひ、マネして欲しい。


ご質問、お仕事の依頼などはmu-@mu-s.comまでお願いします。

mu-s HOME / Study!!menu