LIVE RECORDING  

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かつてレコードやCDで発売される音源はスタジオで制作されるかLIVE RECORDINGによるものがほとんどだったが、昨今、いわゆる宅録の普及で作家やアレンジャー宅で制作されるものが半数以上を占め大手のスタジオはつぎつぎと消滅している。 そんな中、「やっぱLIVEでしょう!」という声も多く聞かれるが、世界経済、日本経済、音楽業界全体の売上高の縮小から音源制作費の縮小は顕著で安価な宅録が幅をきかす現状は中々打開出来ない。LIVE RECORDINGを一度も経験した事の無いエンジニアも多いらしく僕のとこに質問メールが来る事も増えてきたので「LIVE RECORDING のやり方」をまとめてみた。

 

1)おおまかな規模感や予算を確認する。

まずはライブレコーディングの予算と規模を考慮する。地獄の沙汰も金次第とはいうもののお金さえあればなんとでもなるものでもない。仮に大金持ちのボンボンがいきなり武道館を借りてライブをやったってそんなに人が来る訳も無く、かといって小さな会場で満員にしても大型の録音車の駐車スペースなんて無い。小さな会場ではそれなりの録音システム、大規模な会場では集客や予算を考えながらシステムを組まなければならない。また、2チャンネルの一発録音なのか、マルチトラック録音なのかによってその後の作業内容は随分違うハズ。予算と会場を考慮しつつ具体的な計画を練る。録りっぱなしって訳にはいかないのでミックスにかかる費用やスタジオの予算、成果物の用途やマスタリングの有無も事前に確認する。

以下は規模に応じた録音形態の例。詳細はリンクをたどって業者さんのサイトで確認して欲しい。

 

大型録音中継車 概算50万/Day〜
大型のスタジオ用コンソールやモニターシステムを搭載、小規模なスタジオがそのまま何処へでも行けますよって感じ。居住性も良い。場所によっては電源車もご一緒。絶対に失敗は許されない1度きりの大規模イベントや潤沢な予算がある場合はコイツがお勧め!! (写真はヒビノのODYSSEY号)
この業界では老舗、名の知れたアーティストなら必ず一度はお世話になってるんじゃないだろうか? 大規模イベントや武道館、ビッグサイトなどでもこのロゴの車を見る機会は多いハズ。 .
外タレや国内大物のツアーのPA大手といえばヒビノ。録音車も超弩級!録音したものをミックスするスタジオやMAスタジオも完備。
     

 

小中型録音中継車 概算30万/Day〜
小規模なデジタルコンソールや小型のモニターシステムを搭載、居住性はともかく、機材的には小規模なスタジオがそのまま何処へでも行けますってコンセプト。(写真はバーニッシュのMorby-R号)
この業界では老舗、大型、中型、小型と全部で5台の録音車を運用。4号車が小型だが中々豪華。 .
BURNISH STONE RECORDING STUDIO が母体のレコーディングモバイル。制作コストがガンガン下がっている昨今、質の高い作品をそこそこの価格で収録出来る。スタジオに戻ってのミックスまで含めたパッケージ料金もある。

 

MIX MIX

 

凄腕エンジニア、佐藤雅彦君が愛車RAMチャージャーを改造しまくって作ったモバイル。基本は自分がミックスするアーティストのライブのつもりだったらしいが今や超多忙。モバイル分野でも売れっ子になってしまった。

 

 

エンジニア+機材 概算15万/Day〜
レコーディングエンジニアが主に自前の機材+レンタル機材等で小規模なレコーディングシステムを構成。車に積んで運びステージ袖やPA席横、楽屋等に仮設して録音する。ProTools LEを使用して8〜16CH程度、またはダイレクトにミックスして1ビットのステレオ一発録音を行うってのが多いかも。 「ミックスまでやってトータルいくらで」っていうパッケージ料金になる事も多い。
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車載機材例
クラシックの8CH録音機材
スロバキアでやった1bit ステレオ録音
     

 

ワンポイントステレオ録音 概算10万/Day

インターネットで「ライブ録音」などで検索すればたくさんの録音業者様がヒットするハズだ。高級なステレオペアマイクや秀逸なプリアンプを使用して収録。そのままCDRに焼いてくれるっていう業者さんが多い。ピアノ発表会や市民オーケストラの録音、ビデオ録りなど。

 

ついでにパラで録音 概算5万/Day〜

PA屋さんによっては多少の追加料金でとりあえず全チャンネルをパラでProToolsに録音してくれる所もある。特にAVIDのVENUを導入してると数本のケーブルを繋ぐだけで準備時間も節約出来て楽だ(ただしVENU側にHDXカードが搭載されてる必要が有る)。VENUE.de REC
アナログのダイレクトアウトからアレシスタスカムローランドBBP1B BlackBox Playerなどのマルチチャンネルハードディスクレコーダーにつないで録音する場合もある。ただし、最近はどこもかしこもデジタル卓になってしまってスロットになにがしかのカードを搭載していないと手も足も出ない事も多々ある。

お手軽に録音出来るが各トラックの録音レベルは低い事が多い。またAudienceマイクを別に立てておかないとせっかくのライブなのに拍手や声援がすごく寂しいなんて事も多々あるので要注意!

 

フィールドレコーダーでステレオ録音 

昨今、コルグのMR2やソニーPCM D50、ローランドR4 Pro、ZOOM h2nなど話題のデジタルレコーダーがすごく安く手に入れられるようになった。ほとんどはPCMレコーダーだがコルグのMR2はなんと1ビット(SACDグレード)でも録れる。素人がテキトーな位置に置いて録音してもびっくりするほど良い音で録れる場合もある。出演ミュージシャンが持ってきたレコーダーがPAコンソールの上にズラリなんんて光景も珍しくなくなってきた。

 

1)具体的な予算からプランを選択。(〜16CH編)

よくありそうな例で、たとえば 「JAZZのピアノトリオ、インディーでCDを出したい」演奏場所(関内カモメ)と日時は決まっていて予算もギリギリまで下げつつ、CDリリースして胸を張れるレベルをご所望ってな場合。上記の高級録音車は一瞬で却下、「ついでにパラ録音概算5万/Day」コースが順当だが関内カモメの規模だと先方がそれに対応していないので消去法でいくと「エンジニア+機材 概算15万/Day」コースになる。マルチトラックで収録してあとでミックスってなるとミックスの予算が別途必要になっちゃうので基本は2CH一発録り。おさえでマルチトラックも録れるといいなぁってトコだろう。

 

2)INPUT プランを練る

まずはインプットの数とマイクなどを考えてみる。トリオ編成のうちベースがWBかEBかにもよるが、いずれにしてもベースはAVALON U5 があれば楽に良い音で録れる。かつてはベースの録音はとても難易度が高かったがいい時代になったものだ!!
次にピアノ、スタジオ収録であれば僕のベストセレクションはノイマンのU87を2本だが、ライブとなると常設である訳はないので予算が許せばレンタル。だいたいどこも1本5,250円/DAY、JAZZドラマーの知人がやってるMDSスタジオでもレンタル可能。
ドラムは曲調にもよるがミニマムだと3本、キックにMD421、オーバーヘッドにC414を2本。タイトなドラムを録りたければスネアにMD421かSM57を2本、各タムにMD421かSM57を1本づつ、ハイハットにC451あたりを1本追加する。
最後がAudienceマイク、最低2本、出来れば4本は立てたい。

で、わかりやすく書き出してみるとミニマムで8チャンネル、標準で16チャンネルは必要(予備は含まない )って事になる。

No.  楽器 MIC / DI  2nd Choice  備考
01 E.BASS AVALON U5   AVALON U5 持込み
02 APF - L U87 Blue Baby Bottle Blue Baby Bottle 持込み
03 APF - R U87 Blue Baby Bottle Blue Baby Bottle 持込み
04 Kick MD421 ATM25 又は PAが使用してるものをパラで  
05 Over Head L C414 又は PAが使用してるものをパラで  
06 Over Head R C414 又は PAが使用してるものをパラで  
07 Audience - L Audix OM6 又は C414  
08 Audience - R Audix OM6 又は C414  
    SM57    
09 SNARE - TOP SM57 又は PAが使用してるものをパラで  
10 SN - Bottom C451 又は PAが使用してるものをパラで  
11 HH C451 又は PAが使用してるものをパラで  
12 F TOM MD421 又は PAが使用してるものをパラで  
13 M TOM MD421 又は PAが使用してるものをパラで  
14 H TOM MD421 又は PAが使用してるものをパラで  
15 Audience2 - L Audix OM6    
16 Audience2 - R Audix OM6    

 

3)RECシステム プラン

入力数が確定したらどういうシステムで録るかを考える。手持ちの機材で足りない場合は調達(レンタルなど)の費用も勘案して、また、会場の駐車場の有無や駐車場からの運搬方法も調べて最終的なシステムプランを決定する。

 

 

4)電源容量のチェック

最近ではそんな事故も激減したが、かつては「楽屋やPA席の横ででレコーディング中に厨房の電子レンジを入れたら録音システム全部の電源が飛んだ」なんて笑えない話しが何度もあった。念のため、使用機材の電源容量をチェックし、会場で使用可能な壁コンの系統や容量をちゃんと把握しておこう。

 

5)仮組み&チェック

REC SYSTEMが全部いけそうだったらとりあえず一度システムプランどおりに仮組みしてみる。入力のパラボックスに1本づつ、あるいは全部のマイクを接続してチェックする。(まだパッキングはしない)
収録用のハードディスクはスペックを満たしたもの(7200回転、流体軸受け、オックスフォードチップ搭載で空冷ファンを有するもので初期化済み)を準備する事。日本で一番沢山ProToolsを売ってるTAC SYSTEM製が業務用の割りには安くてお勧め。

 

6)会場打ち合せ

会場の担当者にインプットプランとシステムプラン、可能であれば録音システム全部を組み上がった状態の写真を添付して、「何月何日の○△□というイベントの録音を担当いたしますエンジニアの○Xですが、添付資料のような録音を計画しております。ついては録音場所や信号を分岐する場所、Audienceマイクの設置場所などをチェックさせていただきたく、ご都合の良い日に下見なぞさせていただけますでしょうか?「という丁寧なメールを出す。
下見の日程が決まったら指定された時間に伺って可能であれば先方のPAプランを聞き、電源の系統や取り回し、録音場所や信号を分岐する場所、Audienceマイクの設置場所、録音場所に使えるテーブルなどが借りられるかどうかや搬入口、駐車場などを確認する。この時、会場の搬入可能時間も確認、リハの裁定でも1時間前には入れるように交渉しよう。出来ればクライアント様にも同席してもらった方が交渉しやすい。
で、すべてクリアになったら最終のシステムプランを作成する、システムプランにはVer.No.と作成日を入れておく事。

 

7)パッキング

最終のシステムプランにそって過不足なく必要機材を残らずパッキングする。予備のケーブルとマイク、予備のヘッドフォンは念のため各1を追加する。
あまりにも機材が多くて一人で持ちきれないような場合はバイト君を手配する。(天候不良の可能性も考慮が必要)

 

8)運搬、搬入&設営

会場に早く着いたらその辺でお茶でもしようってくらいの余裕で出発する事。せっかくちゃんと準備しても大渋滞で遅刻しましたではプロとしては失格。また、余り早く会場入りするのも会場に失礼だし、場合によっては誰もまだ来ていないので入れないって事もある。会場打ち合せで決めた入り時間ちょうどに入るのが望ましい。
会場入りしたらすみやかにセッティングを始める。ケーブルが煩雑になるのも困るがむやみにガムテープで固定するとはがす時にヤバイ字体が怒らないとも限らないので注意が必要!
セッティングが終了したら電源を入れてチェック、出来れば1〜2分、テストで何か録音してみる。OKであればのんびり休憩しつつPAのサウンドチェックやリハの時間を待つ。PAのサウンドチェック前に使用するすべての回線のチェックはすませておく事。また収録用のハードディスクはイニシャライズしておく。

 

9)サウンドチェック & リハーサル

PAのサウンドチェックが始まったら向こうの作業に師匠をきたさないよう配慮しつつサウンドを作る。間に合わなければリハの時間も使ってじっくりと音創り&バランスをとる。リハの前半はボロボロでも良いから諸々のチェックをキッチリ行う事。逆にリハの後半でもまだボロボロだとかなりヤバイぞ。ここまでの作業ですでに90%が終わっている。後は本番を待つのみだが本番が始まると大抵の場合リハよりも音量が上がるので各チャンネル3dbくらいづつ下げておくと少しだけ安心。

 

10)本番

本番が始まると飲まず食わずは言うに及ばず、トイレにも行けないので本番前には軽く軽食をとり、トイレはすませておく。あとはリラックスして一発ミックスを楽しむ!

 

11)バックアップ

本番が終了したらただちにSAVEする。また、コンピューター周りだけは特に安全を確保しつつデータのバックアップを行う。僕は落としても安心のLACIE製のポータブルタイプを使っている。

 

12)撤収

本番が終わったらバックアップをしつつ、高価で小型のものから順に撤収する。(たとえばノイマンのU87は1本27万円、万が一コイツを紛失したらえらいことです!!)出来ればぞうきんやボロ布等を持参してマイクケーブルなどはキレイにしながら巻く。忘れ物など無いように、またゴミなど残さぬようにキッチリと撤収する。早くパッキングが終わったらPAやミュージシャンの撤収を手伝うくらいの余裕が欲しい。



1)具体的な予算からプランを選択。(〜24CH編)

JAZZのピアノトリオなら16で収まるが,、違うジャンル(POPS?)だともう少しチェンネル裕が欲しくなる。とにかく出来るだけパラで録って欲しいっていう要望は結構ある。16までなら結構楽勝、24になると選択肢が急に狭くなる。24以上になるとやはりHDシステム一式を持って行くことになるので結構おおがかりになる。

 

2)INPUT プランを練る

まずはインプットの数とマイクなどを考えてみる。ライブの命はAudienceマイク、なにがなんでも最低2本、出来れば4〜8本は立てたい。

で、わかりやすく書き出してみると予備1を含めると以下のようになる。ボーカルが増えたりソロ楽器が増えたりした場合はサブミキサー等でTOMをまとめる。それでも足りない場合はSN - Bottomはナシとか.....。

No.  楽器 MIC / DI  2nd Choice  備考
01 E.BASS AVALON U5   AVALON U5 持込み
02 Kick MD421 ATM25 又は PAが使用してるものをパラで  
03 SNARE - TOP SM57 PAが使用してるものをパラで  
04 SN - Bottom SM57 PAが使用してるものをパラで  
05 F TOM MD421 PAが使用してるものをパラで  
06 TOM L MD421 PAが使用してるものをパラで  
07 TOM-M MD421 PAが使用してるものをパラで  
08 TOM-H MD421 PAが使用してるものをパラで  
    SM57    
09 Over Head L C451 C414 又は PAが使用してるものをパラで  
10 Over Head R C451 C414 又は PAが使用してるものをパラで  
11 HH C451 又は PAが使用してるものをパラで  
12 スペア   PAが使用してるものをパラで  
13 E.G L SM57 PAが使用してるものをパラで  
14 E.G R SM57 PAが使用してるものをパラで  
15 KEY - L D.I PAが使用してるものをパラで  
16 KEY - R D.I PAが使用してるものをパラで  
         
17 Perc. L SM57 PAが使用してるものをパラで  
18 Perc. R SN57 PAが使用してるものをパラで  
19 Main Vocal AUDIX OM6 PAが使用してるものをパラで  
20 Cho AUDIX OM6 PAが使用してるものをパラで  
21 Audience F L C451 AUDIX OM6  
22 Audience F R C451 AUDIX OM6  
23 Audience R L C451 AUDIX OM6  
24 Audience R R C451 AUDIX OM6  

 

3)RECシステム プラン

入力数が確定したらどういうシステムで録るかを考える。手持ちの機材で足りない場合は調達(レンタルなど)の費用も勘案して、また、会場の駐車場の有無や駐車場からの運搬方法も調べて最終的なシステムプランを決定する。

D-Sub25--XLRの変換ケーブルや、例2の際、ライン入力で使用する TRS-XLR ケーブルなどは忘れないように準備が必要。

 

 

4)電源容量のチェック

上記の様なシステムであれば15Aの壁コンで十分足りるので心配はいらない。

5)〜12)は16CHまでのシステムと同様なので省略



13)MIX

おおまかにいって2種類の形態がある。

a)おまかせミックスで成果物を提出し、気に入らない点があれば修正ミックスを作成する。
 →エンジニアの自宅ワークルーム等で行う事が多い。

b)関係者立ち会いで方向性を確認しながらミックスする。
 →メーカーのミックスダウンルーム等で行う事が多い。

せっかくスタジオ録音ではなくライブレコーディングなのでスピード感やオーディエンスリアクションをたっぷり入れた雰囲気のあるミックスにしたいがさじ加減については事前にクライアントと打ち合せをしておく事。

また、根性入れてやるのは勝手だが余り時間をかけすごると多方面に迷惑をかける事にもなりかねないのでどのくらいの予算でどのくらい時間をいただけるのかも事前にクライアントと打ち合せをしておく事。一般的には2時間強のライブだとまじめにミックスすると3〜4日は普通にかかるが最近では自宅作業1日、スタジオ作業1日でバッチリ仕上げて欲しいという要望が多い。

最終ミックスがDVD用にも使われる場合、マスターのサンプリングレートやビットディプスをどうするのかも要注意。

 

でわ、Good Luck〜!!!!

 

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