発音源が楽器の場合は間接音(響き)をたっぷり含んだ後方の(D〜Fの)マイクの音も好評な場合はあるが、ナレーションや講演等では聞き取りにくい不明瞭な声になってしまう事が多い。音源に最も近いマイクAは通常オンマイクと言われ、比較的クリアに収録可能だが、このオンマイクでも部屋の形状や響き方によっては相当にリバーブ感を感じる。これを回避する為には反射の大きな部屋ほどマイクを音源近くに設置する必要がある。
音源から遠いマイク(EやF)は直接音はすでに減衰、拡散してしまっているので間接音(響き)の多い音をメインに収録している事になる。当然音量も下がるため、後で音量を上げると暗騒音や周辺の雑音も同時に上がってしまい、かなり気になるレベルに達し、問題になる事も多い。EQやノイズ除去ソフトを使用しても劇的な改善は不可能。(空調騒音等は75Hz以下をフィルターでカットする事で多少の改善は可能)
また、音源から遠いマイクは音源からの距離によりDELAYを生じる。これは音の速度(秒速約320m)が光の速度に比べかなり遅い事に起因する。カメラが対象をアップで捉えている場合、絵と音がマッチしない為、違和感を感じる。(仮に対象物からカメラまでの距離が30mであれば約100ミリ秒、300mあれば約1秒、音が遅れて聞こえる。)
ではオーディオエンジニアは一般にどういう方法で収録するかと言うと、オンマイクAをメインに収録するが、響きや会場のオーディエンスリアクションを加える為C〜Fのマイクのいずれか(または全部)をミックスし、クリアだが会場の雰囲気が伝わる音を録る。見切れの問題(カメラにマイクが写る事を嫌う場合、見えない位置にマイクを設置)やセッティング時間の制約、機材的な制約等で複数のマイクが使用出来ない場合はピンマイクによるオンマイク1本、もしくは音源になるべく近い位置に仕込んだマイクを使用するのが一般的。(響きはリバーブマシン等で付加出来るが除去は出来ない)
もしPAを使用しているような場合はPA+Audienceのミックスが良いが、PA-OUTのみやPA席に置いたAirマイクだけで収録する場合もある。(余裕の有る場合はPAとは全く別にすべてのマイクをミックスする。)
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