□ 半導体マイク MEMS(Micro-Electrical-Mechanical Systems)マイク

リボンマイク、ダイナミックマイク、コンデンサーマイクは知っていても半導体マイク、あるいはMEMSマイクと言ってもなじみの無い人がほとんどだと思うが、実は使われてる数で言うと今やダントツ一等賞がコレ。主には携帯電話やラップトップパソコン用だが、出荷数は年間10億個以上というとんでもない数。

振動板部分の構造や理論はコンデンサーマイクそのもの。通常のコンデンサマイクは機械加工技術によって作られるが、MEMSマイクは半導体制作技術(シリコンや水晶などの結晶やガラス材料などにエッチングやCVD(化学的気相成長)などの処理を施して1mmにも満たないような大きさでも極めて微細な機械的な構造を作る技術)によって作られる。断面構造図はココを参照

ちょっと前までは既存の小型マイク市場の大半はECM(electret condenser microphone)が占めていた。既存のECMマイクは耐熱性が悪く手作業によるハンダ付けで実装していたため,電気的接続の信頼性を確保できず機器出荷後の不良もあった。MEMSマイクはシリコン製のため摂氏200度以上の高温にも耐えられるので、他の電子部品と一緒にリフローで一括実装することが出来、信頼性も高く、この分野では最もメジャーなマイクとなった。

黎明期にはウィキの記述でも「ゲルマニウムやシリコンなどの単結晶の圧抵抗効果,エサキダイオードに圧力を加えたときの抵抗変化,あるいはトランジスタに圧力を加えたときの電流増幅率の変化を利用したマイクロホンで,その特性は圧電素子を用いたクリスタルマイクロホンと似ている。」とか、他の検索でも「シリコンマイクの周波数特性は、通常のマイクに比べ狭く100〜10KHzでハウジングの共振等でクセのあるものもあり、人の声・動物の鳴き声なら そこそこ十分使える程度」など、ネガティブな記述が多かった。

しかし、昨今の製品は業務用や測定用の高価格マイクと比較しても引けをとらない性能のものもある。

ANALOG DEVICE社の米粒大のMEMSマイクADMP411を例にとると、高性能、高SPL、低ノイズ、低消費電力の無指向性マイク、小さなハウジングにMEMSマイクロフォン部分とインピーダンス・コンバータ・アンプが入っている。つまり、音を電気に変換する極小のマイクがマイクプリアンプに直結されている構造。131dB SPLまで線形の応答性を維持、SNRが高く周波数特性も20〜20,000Hzと非常に広いため、明瞭かつ自然な音が得らるという訳。 電源は1.5〜3.36Vだから乾電池2本でOK、低消費電流:250μA以下って事は乾電池2本で1年以上も動作可能。

振動板を小さくしていくと高音まで特性は伸びるけれども、S/Nは悪くなり、S/N比を高めると、高音圧での非線形歪みが著しく増大するってのが従来のマイクの常識だったが、最新のMEMS技術でマイクを作ると小型になるだけではなく、マイクの性能を上げ、高SPL、低ノイズ、低消費電力、デジタル出力も可能などいいことづくめ。主な用途が携帯電話やラップトップのパソコンの為とんでもない数が使われるため価格も安い。基盤への表面実装も可能で、各個体ごとにばらつきなく均一な性能を有するため以下の様な特殊マイクも考えられる。

・複数個を使用してノイズキャンセリングマイク(携帯電話ではすでに実用化)

・1bit出力が直接出ているMEMSマイクなら1ビット出力に赤外線LEDをつなげば光ワイアレスマイク

・指向性を自由にコントロール可能な高性能のフェィズドアレー型マイク。
 ( 1m x 1m であればスパイも真っ青、500 x 500 個の超指向性マイクアレーが可能 )

熱や湿気にも強い事から料理番組(天ぷら鍋のすぐ横にでもセット可能)やスポーツ番組(プールやスキー場)などではすでに相当数使用されている。

f特もダイナミックレンジもすぐれていてしかも安価なので携帯電話やラップトップパソコンばかりでなく、フィールド録音、音楽録音にも使用機会は増えるハズ。

 

 

 

 

 


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