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□ CM映像に付加する音楽

映像作品における音楽は時として非常に重要な役割をになう作品によってはまず先に音楽がある場合もある。また、作品によっては音も音楽も全く無いものもある。

通常の商業的な作品の場合、だいたいのスクリプトがあがった時点から映像も音楽も並行して制作が進められ、最後にMAという作業(海外では同じ作業をオーディオスゥートニングという)で音と映像を合わせる。

音楽家からみた場合、広告代理店や映像制作会社から音楽の発注を受ける訳だが、この時点ではほとんどの場合はまだ映像も何も出来てなく、演出担当者からかなり茫洋としたあいまいなイメージを伝えられるだけだ。プロの音楽家は制作プロデューサーや演出担当者が意図している内容をいかに正確にくみ取り、デフォルメして、クライアントが満足する音楽を創り出すのが仕事となる。

受注形態としては音楽家個人の場合と、音楽ディレクターやレコーディングエンジニア、作曲家、編曲家、作詞家を包括する音楽制作チーム(会社)として受注する場合がある。どういう形態で発注するかは主に制作予算による。

たとえば(電通などの)大手広告代理店が(資生堂などの)大手企業の商品で全国展開キャンペーンの大規模なテレビCMを制作する等の場合はほとんどが後者でありバジェットも素晴らしく大きい。

地方の映像制作会社がローカルなCMを製作するような場合は地元の音楽家に依頼する場合が多い。この場合、音楽家は作曲、編曲だけでなくある程度自宅で音を録音する事が求められ、すぐオンエア出来る状態(CDなど)で納品するが予算は小規模である。長引く音楽業界の不況、価格破壊(崩壊?)、ProTools等録音編集ミックスが可能な機器の普及等によりこういった小規模予算による完パケ納品は増えつつある。


制作例)公共広告(人権問題)

製作者:広告代理店----映像制作会社
音楽制作:音楽家(個人)
発注内容:テレビ15秒、ラジオ20秒(テレビ用をエクステンド)

演出からの指示事項:全体に明るいイメージ。テンポよく映像が切り替わって行くイメージなので音楽はリズムメインで手拍子を入れてください。微妙なテーマではありますが「今ふうのカッコいい感じ」、みんながノってくるようなかっこいい曲がいいです。メロディ(ラララ、歌詞はなし)をうっすら入れて下さい。


この程度の指示事項だけでクライアントが何を求めているかを理解して、イメージを共有し、まったくゼロから音楽をクリエートしていく訳だから音楽家も楽では無い。(歌詞が指定されていないだけまだ楽?)

音楽制作のフローはおおむね以下の通りになる。

→ クライアントと打ち合わせをして出来る限り作品全体のコンセプトを明確にする。
→明るい、暗い、軽快、都会的、ほのぼの、洗練された、やぼったい、子供っぽい、テンポよく、ノリがいい、ガンガン行く、癒し系、スローな......etc. etc. 数々のキーワードの中から、打ち合わせや音楽コンセプト、演出からの指示事項の中に含まれているものを勘案して制作する音楽の方向性やテンポを決める。
→15秒、20秒にどのようにおさめるかを計算して構成やテンポを再度検討。

ここから先の作曲作業は作家によってかなりスタイルが異なる。(メロディーから作り始めたり、ドラムのパターン、あるいはベースパターンを先に作ったり、ギターリフなどから始める場合もある)

→ラフなイメージを録音して提出、方向性を確認する。(この時、発注者側は引き続きこの音楽家にまかせるべきか、経費がかかっても別の作家に頼むべきかの判断をする、コンペの場合はこの時点で作家を決定する。)
→基本線がOKであれば本番の製作にかかる。多少のズレがあれば修正すべき方向を確認し本番の制作にかかる。
→完パケ作品を納入。

→クライアントの「OK」をもらって作業終了。


ちなみにこういったCMなら私の場合は以下のような手順で制作する。

1)キーワード「今ふうのカッコいい感じ」を目指してリズムトラックを作る。
2)「明るいイメージ」「みんながノッテくる」をイメージしてカーニバルふうのパーカッションを入れる。
3)指定項目のクラップを入れてみる。
4)15秒、20秒の小節数をチェックする。
5)15秒を基本にメロディラインを考える。
6)明るい音色を選択してメロディを録音。(とりあえずラララのかわり)
7)ベースラインを考える。(今回はリズムメインと指定あるのであえてコード、PAD等は入れない)
8)全体を聞いてみて必要箇所にクラッシュシンバルやライド、リバースなどを入れる。
9)全体のバランスを整えて作曲部分&インストバージョンは完成。
10)20秒バージョンのエクステンドを考える。
11)ラララのメロディを録音
12)全体のバランスを整えて完成。
13)自分のFTPサイト(パスワード付き)にアップロードしてクライアントに聞いてもらう。
14)OKが出れば完


納品形態はCDR、DVDRなど指定がある場合もあるがインターネット上においておけば関係者全員がいつでも聴く事が出来て便利。最近では向こうも心得ていてダウンロード後、そのままCDに焼くくらいの事は誰でも出来る。宅配便や郵便で送る時差も考慮しなくてすむ分、お互いにメリットがある。

自分のサイトを持っていない場合、ドットマック(.mac)や、無料で利用出来る宅ファイル便などを利用すれば良い。


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