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VOCALのエフェクト処理

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・かつては唄にかけるエフェクトと言えばリバーブが定番、他にはせいぜいフィードバックエコーをかけるくらい。もちろん、音程の補正に(そうっとですが)ハーモナイザーやAutoTuneをかける事もあるにはあったが、昨今、そんな事はもはや常識でかつて非常識と言われたディストーションやバッコンCOMPもあたりまえって事になってきた。

・今回、サウンド&レコーディング誌の企画「マジカル・ミックス・ダウン・ツアー2008」(一線で活躍中のプロ・エンジニア5名に同じ課題音源をミックス・ダウンさせちゃうっていう企画)に参加した為か急にVOCALの処理に関する質問がたくさん来た。....っと言う訳でせっかくなのでミックスダウン時のVocalの処理をまるごと解説するページを作ってみた。

<ミックスダウン時のVocalの処理>

ミックスダウンという作業、実際、何をどうやるかエンジニアによってさまざまなアプローチがある。ドラムやベース、ギター、キーボード、編成によってはブラスやストリングス等、さまざまな楽器と唄やコーラスは「一発録り」で無い限り、通常は全部別々のトラックにバラバラに入っている。で、CDやFM等、一般の人がフツーに音楽を聴く場合は2CHのステレオ。早い話、各トラックにバラバラに入ってる楽器の位置や音量のバランスをとって2CHのステレオに落とす作業がミックスダウン。で、その際に楽器の位置や音量のバランスだけでなく音色や響きを調整したり、場合によっては楽器を足したりカットしたりする。

唄が入ってる場合は唄が主役、唄をストレスなく心地よく聴けるようフューチャーするため様々な処理を施す。

<EQ処理>
・EQ(イーキュー):イコライザー(Equalizer)の略称、詳しい事はTOSS氏のホームページに詳細が記載されてるので(イコライザーで検索したら偶然発見、どこの誰かは存じませんが素晴らしい解説ページです)そっちを参照してもらうとして....、EQを唄に使う場合は声全体の音量ではなく、高音域だったり中音域だったり低音域だったり、任意の帯域を選択的にブーストしたりカットしたりする機材(またはソフトウェア)。さまざまなカテゴリーの音楽性に最適な声質が何かなんて事は誰にも答えが無いが、ボーカリストの声とバックのオケがうまくマッチするように調整するのもミックスダウン中の重要な 作業だ。ただし、素晴らしい声をそのままキャプチャする為に録音時にもマイク選択や立ち位置まで含めさまざまな気配りがなされているハズなのでミックスダウンの際、まったくEQの必要が無い事もある。今回のサンレコの企画のようなアーティストが自分で録った曲をミックスする場合は注意が必要。多少硬質な音系がプロフェッショナルな環境下で収録しなかったせいなのか、あるいは歌い手本人の好みでわざとなのかが問題。エンジニアやプロデューサーが判断するボーカリストの声の魅力と唄い手本人の価値観がちゃんと合っていれば何をやっても問題無いが善かれと思ってEQで大幅に変えたら本人は不満なんてこともたまにある。ちなみに今回僕はノーイコライザでミックスした。(声を補正する必要を感じなかった為)

<COMP処理>
・COMP(コンプ):(Compressor) の略称、一般的なCOMPの機能解説 、僕のお奨めVocal用セッティングは解説ページ を参照。で、何の為に唄にCOMPを唄に使うかと言うと大きく分けて2つの使い方がある。一つは音量が大きすぎる部分を抑える役割、もうひとつは語尾やブレス、余韻などを強調する使い方。定番はUREI 1176、どこのスタジオにもあるこの機材、 特にVocal用にデザインされたものではないが、これを使うエンジニアが多い。ただし、セッティングは千差万別、ツマミの位置だけ見ると信じられないセッティングをしているエンジニアも多い。またUREI 1176とそっくりなプラグインBomb FactryのBF76も秀逸だ。唄用だと通常は4:1くらいの圧縮比 だが、20:1でリミッターとして使用するエンジニアも少なくない。語尾やブレス、余韻などを強調する使い方だとたいがいリミッターモード「バッコンCOMP」、「え?? そんなにかけるの???」ってくらいバッコシつっこむ訳だが、音圧競争のやり玉にあげられる定番ツールWAVESのL1なんかも実は結構使われている。今回のサンレコ企画でも複数のエンジニアが「バッコンCOMP」。DigidesignのホームページにあるWAVESプラグイン、TDMページには海外有名アーティストやエンジニアのインタビュー記事等が掲載されてるがハードウェアのL2をVocal録りに使う例も結構ある。録りはともかくミックスでは特に何でもアリ!!ちなみに私のお奨めはWAVES R-VOX 、もしくは WAVES L1、唄収録時の部屋の空気感や臨場感はフェーダー操作をいくら細かくやっても出しにくいのでコンプ/リニッターを使うという訳だ。

<フェーダー処理>
・Aメロあたま等、音域の低い部分は聞きとりにくい事もよくある。またサビで声を張る部分はレベルも大きい。オケにマッチしたちょうどよいボーカルレベルを保つ為に、通常はフェーダー(スライドボリュームみたいなもの)を操作する。スタジオ用のほとんどのコンソールはこのフェーダーの動きを記憶する事が可能。またプロツールゥやデジタルパフォーマーなどのAWSもフェーダーの動きを記憶したり細かく書き換えたりする事が可能でエンジニアはかなり細かくフェーダーオートメーションを書き込む事が多い。以下はサンレコ企画曲のVocalにおける実際の私の担当したミックスのボリュームカーブ。他の方々のはそれぞれ結構違う。サンレコ5月号を参照。

 

<リバーブ処理>
・「唄にはエコー、これ常識」と言われてきたが、厳密に言うとリバーブとエコーは違うし、リバーブもさまざまな種類がある。また、最近では唄にリバーブをまったくかけない事もある。各種リバーブについては解説ページを参照してもらうとして、今回の企画では付点系のフィードバックを使用した。通常のリバーブに比べかかった感じが薄くスピード感をそこなわずに適度な響きを加える事が出来る。

<ステップトーン>
・最近のトレンドとして唄であれあからさまにエフェクト処理されたものも多々ある。ジャネットジャクソンやマドンナがよく使っているエフェクトがAuto Tune を用いたエフェクト、日本ではミーシャ等も使っていたが最近では女性3人組テクノポップアイドルユニット「perfume 」が大々的に使用している。Retuneを最速にするだけでも似たような効果が得られるが以下のセットでMIDIトラックからコントロールしてやれば完璧だ。ただし、エフェクト色が濃いのでむやみに使用するのではなく歌詞を考えながら使う事。サンレコ企画曲では試したみたがあまり強烈なエフェクト色は歌詞を スポイルしかねないので却下。部分的にコーラスにボコーダーをかけるに留めた。

 

 

 

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