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□ ステレオマイキングテクニック

ステレオレコードが実用化されたのは1957年、1982年にCDが発売され現在に至るが、代表的なステレオ録音の方法は時代により大きく異なる。たとえばホールの三点吊りに使用されるマイクは1990年後半まではノイマンSM69に代表されるMS方式のステレオマイクが主流。地方の公民館レベルだと国産の三研CMS-2が多く見られた。その後、欧米のラジオ局などで多種多様なステレオマイキングテクニックが開発され、最近のクラシックの収録現場では無指向性のDPA4006あるいはschoeps cmc65や球形のKFM6、また指向性のDPA4011など多様なマイクが見られる。

マイクのセッティング方法も定位感を重視したり空間の響きを重視したり、求める音により多様なテクニックが共存する。XYやORYF、NOS方式であれば素人が録っても失敗は少ない。一方、商業的な収録をプロが行う場合はA B 方式が一般的。

若者向け(特に若い女性向け)のドラマのアフレコや自然音のフィールド録音ではバイノーラル方式のダミーヘッドを用いた録音も増加傾向。

 

□ 代表的なステレオマイキング例

A-B stereo

比較用SAMPLE音源ーA

比較用SAMPLE音源ーB

 

もっとも一般的なステレオ録音の方法。ペアの無指向性マイクを使用する。自然なステレオ感が特徴。

マイク:無指向性 代表的なマイクはDPA4006
距離:20センチ前後
角度:基本的には真っ直ぐ(平行)、少々外振りにすることもある。

 

A-B WIDE (Spaced Omni)

比較用SAMPLE音源ーA

比較用SAMPLE音源ーB

 

「A-B stereo」の間隔を広めにとったセッティング。ペアの無指向性マイクを使用する。通常の「A-B stereo」よりステレオ感が増し広がりを感じる。ステージ上の楽器配置はあいまいになるが響きや空間の広がりを感じられる。悪く言うとリバーブっぽくて実音がぼやける。

マイク:無指向性 代表的なマイクはDPA4006
距離:40センチ〜60センチ、または〜80センチ
角度:基本的には真っ直ぐ(平行)、少々外振りにすることもある。

 

XY stereo 

比較用SAMPLE音源ーA

比較用SAMPLE音源ーB

 

2本の単一指向性マイクの指向軸を90度の角度で重ねる。2本のマイクの振動板は出来るだけ近くに置くのが好ましいのでマイク同士があたらない様に垂直方向にズラすのが一般的。(ポータブルレコーダーの場合はクワガタの角の用に対抗)
良く言うと位相の揃った音で存在感が有る。悪く言うとモノラルっぽい。

マイク:単一指向性 代表的なマイクはDPA4011、もしくはShoeps CMC 64
距離:かぎりなく近く
角度:基本的には90度、流派によっては110度や135度

 

 バイノーラル方式(Binaural)
比較用SAMPLE音源ーA

比較用SAMPLE音源ーB

 

ヘッドフォンでの再生を前提とした録音方法。ダミーヘッドと呼ばれる文字通り「偽物の頭部」の耳の位置に仕込まれたマイクにより普段聴いているのと非常に近い音が録音できる。音源の位置や距離感、音の動きの再現度が非常に高い。ダミーヘッドの周りをハサミをチョキチョキしながら一周したり鈴を鳴らしたりしながら1周するデモは有名。目をつぶって聴くと驚く。

ドラマの収録などでも多用されヘッドフォンで聴く限りは前後左右、移動音源、耳元のささやき、後ろからの音も方向や距離を感じ取れる。ただしスピーカーで再生するとがっかりする。

代表的なマイク:ノイマンKU100

 

 MS stereo

 

 

 

MS(ミッドサイド)ステレオテクニックは正面に向かって置かれた単一指向性マイクと音源に向かって真横に指向性がある双方向性マイクを使用。2本のマイクの信号がMSマトリックスでミックスされ、ステレオイメージを作る。このミックスの案配で左右の音(アンビアント)と正面の音(実音)を加減出来るのでマトリクスに入る前の素の信号を収録すれば後でマイクの開き角を連続的に調整可能。ただし、専用トランスやマトリクスボックス使用が前提で可変出来ないマイクも有る。

マイク:単一指向性+双指向性 代表的なマイクはノイマンSM69、三研CMS-2、Shoeps CCM2 & CCM8

シュアーMV8などiPhoneに接続して手軽に収録可能なマイクも重宝する。

 

ORTF stereo

 

 

 

フランス放送協会の開発。2本の単一指向性マイクを17cm間隔とし、開き角は110°。欧米人の左右の耳(鼓膜位置)の間隔とほぼ同じなので耳で聞こえる感じに近いニュアンスで目で見えている楽器配置の再現性に有利と言われる。

マイク:単一指向性 代表的なマイクはShoeps MSTC64U
距離: 17 cm
角度: 110度

 

NOS stereo 

 

 

 

オランダ放送協会の開発。2本の単一指向性マイクをカプセル間隔30cmとし、開き角は90°。ABとXYのいいとこどりのようなセッティングで音空間はどちらかと言うとORTFに近いニュアンス。

マイク:単一指向性 代表的なマイクはShoeps CMC 64、もしくはDPA4011
距離: 30 cm
角度: 90度

 


 

□ 身近な機器にデジタルマイクをつないだ例

昨今諸々の技術の進歩により高価なマイクや高価な録音機器を用いたプロのやり方にとらわれない身近にある機材と安価なマイクをテキトーにセッティングしてもそこそこの音や音空間を収録可能になってきた。レコーディングエンジニアはもはや「絶滅危惧種」。

 

iPhone + MS Mic

比較用SAMPLE音源ーA

比較用SAMPLE音源ーB

 

無料のアプリ、シュアーMOTV(無料)をダウンロードして2万円弱のデジタルマイクMV88を買えば非圧縮の48K24bt ステレオのレコーディングがすぐに可能。コンプやリミッター、イコライザーをかけたりMSマイクの開き角を変えたりが可能。iPhoneは持ってる人も多いのでこの小型のマイクを装着すればすぐに良い音で録音が可能ってのは凄い!!録った音は非圧縮のWAVのままメールで転送出来る。プロバイダーが対応しない大容量も可。

だれでも簡単に高音質のレコーディングが可能。プロがまじめに録った音ともタメをはれる音質。

マイク:シュアー MSデジタルマイク MV88

 

 

GoPro+ XY Mic

比較用SAMPLE音源ーA

比較用SAMPLE音源ーB

 

GoProカメラと言えばプロも多用する超メジャーなアクションカメラ。価格が安いのでアマチュアにも人気。小型軽量で広角、超高画質。モノラルのインターナルマイクがあるが、iGoMic(アイ・ゴーマイク)をつなげばX-Yステレオマッチドペアカプセルにより、広いステレオ・イメージングを実現。音楽録音、スポーツ・イベント、風景/環境音などの収録も可能。軽量でコンパクト、そしてタフ。

MicW Audio社は、航空宇宙産業、オートバイ産業、そして環境ノイズの測定などで幅広く採用されているプロ用測定マイクロフォンで有名なBSWA Technology Ltd.のメンバー。24時間以上の高温多湿環境でテストし、-20℃から50℃および湿度95%まで動作するらしい。

マイク:iGo Mic
角度:90度XY

 

 

MR1+ MEMS Mic

比較用SAMPLE音源ーA

比較用SAMPLE音源ーB

 

各社から多様なポータブルプレーヤーが出ているがKORG MRシリーズは DSD2.8MHzでの録音も可能。プロ用マイクをバランス接続しての録音も可能だが購入時に付属してくるマイクはショボイ。

お薦めはAudioTechnica AT9940とかだが最新の半導体マイク(MEMS)をつかえば高温多湿のような過酷な環境下(たとえば180度の油で天ぷらを揚げてるすぐ横とか雷雨の中で雷の音を録るなど)でも心置きなく録音が出来る。普通の音楽録音で適当なセッティングでもそれなりな音で録れる。ちなみに最近のスマホにはこのMEMSマイクが複数使用され格段に音質がアップした。

マイク:無指向性 
距離:適当
角度:適当

 

 

 

若者

 


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