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PAスピーカーのチューニング

 

FOHスピーカーのチューニング

レコーディングスタジオにおいてはモニタースピーカーは音創りの上で最も重要。そのためスタジオの設計段階から十分考慮され角度やマウント方法、アンプやネットワークも最適化が計られ、しっかりと調整されている。

PAの場合、スピーカーはその都度、会場に持ち込んで仮設することが多いため、乗込んだエンジニアが自分で調整する。この調整作業をチューニングという。

最近はラインアレーを吊る事が多く、それに伴い専用のプロセッサーやコンピューターを使用して一瞬で調整が完了し素晴らしい音場を作り出す事も可能だが、小規模な会場では昔ながらのスピーカーシステムを使わざるを得ない事もあり自分でチューニング出来るにこした事は無い。

チューニングの目標点はフラットな音場。具体的には特定の楽器や特定の音程にピークやディップが感じられたり、センターにあるべきもの(Vo、EBやKickなど)がセンターから聴こえなかったり、明らかに左右の音量や音質が異なったりボンボンしたりキンキンしたりするような事が無いように調整するが、その前にPAシステム全体の最大音量を調整しておく事も忘れてはいけない。

使用するCDプレーヤーはラックマウントタイプでXLR出力のある業務用のCDプレーヤーをお薦めする。安物のCDプレーヤーだと音質的にも出力レベル的にもチューニングするっていう目的には適さないものが多い。

1KHzの基準信号や ピンクノイズが記録されているテストCDをかけてたとえば-10dbのピンクノイズがフェーダーを基準レベルにした時にコンソールの出力レベルがキッチリ-10dbで出るようにCDの受けのレベルを確認後にチューニング用の音楽CDをかけてどのくらいの音量が出るのかをチェックする。まぁ、ほとんどは耳で聴いての判断するが、PA席でSPLメーターで見て110dbくらいがレベルが標準。全然足りないようならパワーアンプのつまみで上げる。レベルが大きすぎるようならパワーアンプのつまみで下げる。

システム全体の本番用の音量が決まったら音質調整に入る。

一般的には1/3オクターブのグラフィックイコライザーを使用して不要な帯域をカットする。どうやって不要な音を見つけるかと言うと、1/3オクターブというのは1オクターブを3分割した狭い帯域のノッチフィルターなので割とピンポイントで音を上げ下げ出来るので、

どれか一つのノブをガビンと上げてみるとその周波数の音の特色が把握出来るので関係なければゼロに戻し、隣のノブをガビンと上げてみる。

 この写真はアウトボードのGEQ

 実際にはデジタルコンソール内のGEQを使う事が多い。

 

このノブの上げ下げを繰り返してどの周波数帯域に問題があるかをを知り調整を行う。このときグラフィックイコライザーはカット方向のみに使うという流派の方もいるが、明らかに不足する帯域があればブーストしても問題無い。ただしブーストばっかりしてるとアンプに入る前の時点でのレベルオーバーしてしまう場合もあるのでNG !

私のようにレコーディングがメインのエンジニアだとGEQを使う事はめったになくパラメトリックイコライザーを用い、任意の帯域をガビンと持ち上げて左右にスイープさせ音のクセを聴きながら過不足を探し、Qや増減レベルを調整してざっくりと調整するのを好むエンジニアはPAでは少数派だが、どちらでも自分がやりやすい方でやれば良い。

聴きわける為の音素材は聞き慣れたCD(音が良いと定評のあるものが良い)でかまわないが、あまりにマニアックな特徴的な音系のものや、インディーズ系にありがちな「曲は秀逸だが音はイマイチ」ってCDだと良い結果は得られない。

世界中の多くのPAエンジニアがチューニングに使用する「音が良いと定評のある超有名曲」が2曲ある。

スティーリー・ダンが1980年にリリースした7作目のアルバム ガウチョ(Gaucho)の1曲目に収録されたバビロン・シスターズ ( Babylon Sisters)

特にミュージカルの現場ではよく聴かれるCD、ミディアムテンポで甘く美しい音色

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TOTOが1995年にリリースした9作目のアルバムTambu。2曲目の I will remember

ロック系の現場ではよく聴かれるCD、ドラムの音が超カッコいい上にスティーブルカサーのヘビーなボーカル。他の曲も秀逸だ。

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この2枚のアルバムが良い音で再生出来ればシステムは完璧。あとはSM58と自分の声で違和感が無いかチェック。それでも心配なご仁はピンクノイズを出してRTAで目視チェック。

 

モニター用スピーカーのチューニング

モニター用スピーカーと言ってもレコーディングスタジオにあるモニタースピーカーの事ではなくステージ上演奏者やボーカリストの為のモニターの事だ。床に転がってたりステージサイドから内向きにセットされてたりする。

   

モニター用チューニングの目標点もある意味フラットな音場。具体的には特定の楽器や特定の音程にピークやディップが感じられたり音が妙にボンボンしたりキンキンしたりするような事が無いように調整する事と、モニター用なのでハウリングしやすい周波数についてはキッチリ抑制するように調整する。さらに、FOH(お客様用のPA)からの回り込みや逆に客席側にも音が回ってしまう事を考慮した音創りをしなければならない。

音調整の第一歩はまずFOHスピーカーで規定レベルでCDをかけてステージ内でその音を聴く。

大抵の場合、ステージにはかなりFOHスピーカーの低音が回り込んで来ている。ステージ上のモニターで低音から高音までフラットな音創りをすると回り込みの低音が足されて大変な事になってしまうのでステージ上の全部のスピーカーで200Hz以下は(場合によってはもっと上まで)フィルターでばっさりカットする。

FOHスピーカーをオフにしてボーカルの立ち位置に立ってボーカル用のモニターからCDを流す。規定レベルにして音量が不足するようならパワーアンプの出力調整ノブを上げ、大きすぎるようなら下げる。

モニター用のバス(MIX)にグラフィックイコライザをインサートし、iPadでリモート出来るようにセットして音を聴き、グラフィックイコライザーのどれか一つのノブをガビンと上げてみるとその周波数の音の特色が把握出来るので関係なければWクリックしてゼロに戻し、隣のノブをガビンと上げてみる。どのあたりの周波数なのかはピアノの真ん中あたりに座って右手のラの音が440Hzなのでどの辺りの周波数をいじるかだいたいのあたりをつけて適当なポイントを探る。またはiPad上のリアルタイムアナライザの振れ具合を見てあたりをつけても良い。リファレンスCDがそこそこ過不足無くなればとりあえずOK。

次に同じ位置でSM58で自分の声でチェックする。変なカラーリングがなくて聞きやすい(モニターしやすい)声ならまずはOK。徐々にレベルを上げてみてハウリングの傾向を探る。低い音でワォ〜〜ンとかなら200とか300Hzあたり,キィ〜〜〜ンって言う高い音の場合、2KHzとか4KHzの事が多い。SW付きのSM58Sが使いやすい。

楽器になじみがあれば、よくギターやのチューニング(音程を調整する)で使われる音、ピアノの前に座って右手の弾きやすい位置にあるラの音(下から4番目のラ)が440Hzとか442Hz。

平均率においては音が1クターブ上がれば周波数は倍になり、1オクター部下がれば周波数は半分になる。グランドピアノの場合、88鍵あり7オクターヴと短3度(A0からC8)27.5ヘルツ〜4186ヘルツ)。つまり一番低い鍵盤がA0で周波数は27.5ヘルツ、その1オクターブ上がA1で55ヘルツさらに1オクターブ上がA2で110ヘルツ、A3が220ヘルツ、下から4オクターブ目のA4が440ヘルツで音叉の基準音。なのでよく聞くチューニングトーンのあたりでハウってたら440Hz付近、ポッポッポッピーっていう時報のポッの音程に似てたら1KHz付近、ピーって音のあたりだったら2KHz付近、そのオクターブ上くらいだったら4KHz付近って訳。

人間の耳は約20ヘルツから20,000ヘルツまでの範囲の音を聴き取ることが可能と言われるが音程として聴き分けることができる上限はせいぜい4000ヘルツ(4KHz)ぐらいまでなのでピアノはどれもほぼほぼ88鍵。一部のピアノはその下にさらに4〜9鍵の鍵盤が存在するがそれらは主に共鳴弦として低域を補強する。僅かながら譜面上でその鍵盤を指定しているものも存在する。高音弦はどのピアノもC8まで。4000ヘルツ以上20,000ヘルツまでの音は聴こえているがハーモニクスの領域。キィ〜〜〜ンって言う高い音の場合、2KHzとか4KHzの事が多いがその倍の8KHzが影響してる場合もある。

楽器にまったくなじみが無く音感も無いっていうご仁でもiPadを使えるコンソールの場合は視覚的に周波数の状態を見ながらグラフィックイコライザもフェーダーレベルも遠隔操作が可能なのでハウリやすい周波数だけをピンポイントで下げる事が可能。

上の段の白い棒グラフがリアルタイムアナライザーの表示。横軸が周波数(左が低い音、右が高い音)、縦軸がレベル。この表示されてる白い点を触ればその周波数の前後10箇所のGEQの状態が下の段に表示される。そのノブを触って6db以上えぃって上げてみればそのポイントの状況がわかる。そこでハウれば上の表示の棒グラフがはねあがる。触った場所が違うようならWクリックするとゼロに戻るのでとなりのノブで試す。「そうそうココ、ココ」ってとこが見つかればそのポイントを下げる。

悪い例としては、あ、ココも、ソコもってむやみに下げて気がついたら全体をフェーフダーで下げてるのと変わらないような状況。なるべく少ないポイントをピンポイントで下げる。

調整が終わったら左側のフェーダー(MIXMaster)をつきあてまで上げてもハウリングがなくて、規定位置に戻して「チェックワンツー」をやってみて十分聴き取りやすい音が出ていればそのモニターはヨシって事にして次のモニターの調整に移る。

時間が無い場合は同じような状態で置かれている他のモニターに設定をまるごとコピペする事もある。

以上でステージ上モニターのチューニングが終了となるが、モニターエンジニアはここからが腕の見せ所。演奏者とコミュニケーションと信頼関係を築き、なるべく小さめの音量で演奏しやすい状況を作る。そのためリハ中は自分の耳でもモニタースピーカーの音の出方をチェックする。演奏者がモニターしにくいような場合でもただ音量を上げるのではなくステージ上のスピーカーの向きで調整するなどしてステージ上で音が大きくなりすぎないように留意する。

インイヤーモニターが使えそうな場所(たとえばドラムとか)にはラインで送ってヘッドフォンアンプや小型卓を置き、ヘッドフォンやイアフォンでモニターしてもらうのも効果的。上記のチュ−ニングにお薦めの楽曲Tambuでドラムを叩いてるサイモンフィリップス氏はドラムの横に小型卓を置き、オーバーヘッドマイクの分岐とモニターから送られて来る他の楽器を自分でミックスしてイアフォーンでモニターしている。

最近ではベースもエレキギターもラインでとってアンプ無し、メンバー全員がワイアレスのインイヤーモニターを使用してステージ上にはモニタースピーカーも無いっていう現場も少なく無いが、逆にオールドスクールで(スピーカーから出してモニターしながら)やりたいっていう演奏者も少なく無い。

まずはドラムとキーボードの奏者が希望すればヘッドフォンやイアフォンで聴けるようなシステムを準備しておくとステージ上は多少静かになり、格段に演りやすくなるハズだ。

 


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