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□ Line Array Loud Speakerの基礎知識


 

□ Line Array の吊り方
 

ProのPA屋さんならそんなもんは日常茶飯事ですが、、、

ここでは2019年8月、昭和音大舞台スタッフ音響専攻の学生さん向けに「テアトロ・ジーリオ・ショウワ」(学内にある客席数1,367席の総合劇場)で行われた授業内容を備忘録がわりに解説する。

今回解説に使用するスピーカはNEXO、GEO M6を5本スタックしたラインアレー。

12月末のミュージカル科と舞台スタッフコースの合同卒業公演に際し、センタークラスターにラインアレーを吊りたいという学生さんの要望で実施した講習。

事前準備として無料のシュミレーションソフト(NS-1 SYSTEM CONFIGURATION SOFTWARE)に劇場の平面図と立面図を入力し、カバレージエリアをシュミレーションし5本のスピーカーの角度を決めて合わせておく。このソフトは無料で誰でも使用できるがウィンドウズのみなのでシュミレーションは学生が行なった。(僕はマック派)

このシュミレーションにそってスピーカー5本の連結角度をあらかじめ決めた値にセットしておく。 今回の学生さんのシュミレーションによればスピーカーの角度は上から0.5、2、15、15。

バトンは一番客席よりのプロサスを使用するがだいたいどのホールもプロサスは最大荷重250キロくらいなので、今吊ってある灯体とスピーカーシステムの重量(連結した状態で60K弱)をあらかじめ把握し、全体重量がオーバーするようなら使わない灯体を一旦外すよう照明セクションと交渉する。最大荷重をホールに確認するのは言うまでもない。

まずは机上のプランを元に吊り物に必要な機材や道具、ケーブル類をリストアップする。 今回はケタ吊りという方法で吊る。

必須ではないがあると便利な優れモノもある。

                      角度計

   距離も計測可能なレーザーポインター

8芯コネクタまで対応のスピーカーチェッカー

 

 

シュミレーションで決めた角度にスピーカーを連結し、パラケーブルとクロスケーブルをプランにしたがって接続する。

 

 

次にバトンを約1mの高さまで下ろし、5mのスリングを2本巻く。(間隔は単管の長さくらい)

 

 このように巻く。

スリングはカラビナを介し単管に接続する。


1mのスリング2本を単管の左右に巻きつけ、横ズレを防ぐため必要であればテープで滑り止めをする。
バンパーの後ろ側(E)の吊り点にシャックルを1つ取り付けスリング2本を通す。

単管のセンターに短い(0.5m)スリングを二重に巻きシャックルを通す。そこにレバーブロックを接続し前側の吊り点(A)にシャックルをつけてつなぐ。これにより垂直の傾斜角を微調整する事が可能。

単管の下の吊り込みのイメージと用具は以下の通り。

 

念のための落下防止措置としてメインのバトンから下ろした長めのスリングとバンパーに巻かれた短めのスリングをカラビナで繋ぐ。角度に影響しないようフリーな状態を保てる長さにする。

この状態でスピーカーがちょっとだけ浮くところまでバトンをゆっくり上げる。写真でいちばん手前に写ってるスリングが落下防止用。

 

スピーカーが浮いた状態で再度チェック。

 

シュミレーションソフトNS-1を起動し、現場の実寸が図面とあっているか? 各スピーカーの角度がシュミレーションした際の角度になっているか? など再チェックする。

吊り込み用のGMT-BUMPERにはA、B、C、D、Eの5つの穴があり一点吊りも可能だがその場合は角度の微調整は出来ない。今回のように二点で吊り、レバーブロックを使用すれば細かい微調整が出来る。

もう少し大きなシステムを吊る事になるとバンパーにEXBARを取り付けてワイドな二点で吊る場合もある。より細かい調整が可能になる。

バトンが下がっている間にスピコンを全部つなぎバトンをあげる前に出力のチェックを行う。
卓側のセッティングが間に合わない場合はとりあえずはスピーカーチェッカーでも可。

<クロスケーブル>

通常NEUTRIK NL4FX ケーブルは2系統のスピーカー出力を伝送可能で4つの接点は1+、1-、2+、2ーになっているが、クロスケーブルは1の±を2の±に、2の±を1の±にクロスして接続したもの。このケーブルを使用する事でスピーカーまではケーブル1本を接続すればOK。たとえば上2本がパラ、した3本がパラの場合は2本目と3本目の間にクロスケーブルを使用する。

アンプも従来のアンプの常識だと入力が4つあって出力が4つだったら入力Aが出力Aに、入力Bが出力Bに、入力Cが出力Cに、入力Dが出力Dに出力されるが昨今のアンプはアサイナブルだ。
今回のプランだと入力Aに入った信号は出力Cから2系統が一つのスピコンでNEUTRIK NL4FXのピン1〜4両方に出力される。

 

<垂直傾斜微調整>

ケーブルの接続が完了したらバンパーに角度計をあててバンパーの角度がシュミレーションどおりになるようレバーブロックで調整する。
角度計が無ければiPhoneの無料アプリでもOKだがデジタルの角度計は2000円前後なのであると便利。
バンパーの接続部分で7°上げて組み、角度系で見ながら全体的に9°下げたので 最終的に2°下向きで吊った。

調整が終了したらレバーブロックのレバーはFree(ニュートラル)にしておく。(レバーは下向きにブラブラした状態)

<左右振り角の調整>

単管のセンターに二重に巻いたスリングを左右にズラすと左右振り角の調整が可能。
通常はスピーカーの重量がかかっているため簡単には動かせないので、吊った状態で一人が脚立に乗り、スピーカー下部を2人で少し持ち上げてる間に動かす。スピーカーの真後ろ3mくらいの場所から見ると角度がわかりやすい。この写真の状態は若干の上振状態。
法律が厳しくなり今後はこの作業もフルハーネスに安全帯着用が必要になるらしい。来月フルハーネスの講習を受講予定。あーめんどくさい。脚立も今の足の位置で片側に立つのはOKでこのようにまたいで座るのはNGとか。こっちの方がずっと安全と思うのだが......。

これで準備は完了。バトンを定位置まで上げてレーザーで高さが合っているかチェックする。

OKなら立ち下ろしていたスピーカーケーブルをシーリングに巻き上げて上で固定する。

全体の吊りイメージと用具の説明は以下のとおり。

 

 

□ Line Array Loud Speakerとは?
 

ラインアレイスピーカーとは?

LINE ARRAY Speaker:直訳すると「線配列スピーカー」

ちなみに英語だとSpeakerはしゃべる人の事。僕らがいつも使ってるスピーカーは正式にはLoud Speakerだそうです。


ラインアレイスピーカーとは線状音源理論を応用したスピーカーシステムを指し、同一形状のスピーカーが縦一列に近接して並んで配置されることで、位相の揃った連続した線状の音源が形成されるスピーカーシステム。

ポイントソーススピーカーでは音が水平方向にも垂直方向にも球面状に広がっていくのに対し、ラインアレイスピーカーでは垂直方向にはほとんど広がらず水平方向にだけ広がる特性を持っている。

たとえば小型軽量なラインアレー、NEXO「GEO M6」の場合、水平の指向性は80度(110度にも拡張可能)に対して垂直の指向性はわずか20度。たとえば一番近くを狙う一番下の1ユニットだけ110度とかにも出来る。

かつて主流であったポイントソーススピーカーの場合、観客に到達する音響エネルギーは距離の二乗に反比例する。すなわち距離が2倍になると(カバーエリアが垂直・水平方向とも2倍になるため)面積は4倍となり、対面積当たりの音響エネルギーは4分1になる。

ポイントソーススピーカーで大会場でライブを行うためには、スピーカーをどれだけ用意し大音量で鳴らせるかが勝負だった。しかし闇雲に大音量を出すと、スピーカーに近いエリアの人にはうるさく、音量を落とすとスピーカーから遠い人にはショボイ音しか聞こえないという問題があった。

ラインアレイスピーカーではカバーエリアは線状音源の理論どおり、距離が2倍になっても垂直方向への拡散は抑えられ、水平方向のみが2倍となるため、音響エネルギーの減衰はポイントソーススピーカーのほぼ半分ですむ。したがって音響出力も低くできるため、ハウリングにも強いという特長を持つ。

また音の上下方向への放射が抑えらる事で壁や床での不要な反射音を抑制出来、残響の多い空間でも高い明瞭性と優れた遠達性を確保できる。


音の上下方向への放射が抑えらる事により、会場ごとの複雑な反射音をあまり考慮せずにすむため、パソコンのソフトで簡易な音圧分布マッピングが簡単に作成可能になった。ドームやスタジアムから小規模な多目的ホールまで、大小さまざまな音場を事前にシュミレーションすることが出来、スピーカーの数や最適な角度を視覚的に知る事が出来る。




通常はバトンやトラスから吊るフライングで使用する事が多いがグランドスタックで使用することも可能。



ラインアレーが登場して久しいが、昨今では隅々の中小PA会社や設備音響の分野においても普及が進んできた。
11月に幕張で行われる国際放送機器展(Inter Bee)においてもここのところ毎年「
INTER BEE EXPERIENCE X-Speaker SRスピーカー体験デモ」という催事が行われ大盛況。主要メーカーのSR用スピーカーを一堂に会し、実際に聴き比べられる企画で今年で6年連続の人気企画。まだ今年何社が参加するかアナウンスされてはないが昨年は、15ブランドが出展していた。小型ラインアレイ、中・大型ラインアレイの2018年の出店社は以下。会場が大きいので小型スピーカーの出展は少ない。

 

小型ラインアレイスピーカー
  機種名 出店社
  JBL Professional 【VTX-A8] ヒビノ株式会社
  TOA【Q-HX-7BSR] TOA 株式会社
  RAMSA 【WS-LA500A ] パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社
  BOSE【ShowMatch DeltaQ array loudspeaker】 ボーズ合同会社
     
中・大型ラインアレイスピーカー
  CODA AUDIO【AiRay/SC2-F】 ヒビノインターサウンド株式会社
  RCF【D-Line Series HDL30-A 音響特機株式会社
  ADAMSON【E12】 リワイアー株式会社
  Martin Audio【PASSIVE OPTIMIZED LINE ARRAY WPC】 株式会社マーチンオーディオジャパン 
  d&b audiotechnik【GSL8】 ディーアンドビー・オーディオテクニック・ジャパン株式会社
  NEXO【STM Series 株式会社ヤマハミュージックジャパン
  Electro-Voice【X-Line Advance X2-212】 ボッシュセキュリティシステムズ株式会社
  L-Acoustics【K2】 ベステックオーディオ株式会社
  EAW【ADAPTive System Anya v.2】 音響特機株式会社
  dBTechnologies【VIO L208】 ティアック株式会社

 


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