mu-s HOME / Study!!menu
 
 
 

□ ドラムの録音

 

「ドラムの録音は難しい」と言われる。何故難しいのか? 

一言でドラムと言ってもバスドラム、スネアドラム、ハイハット、タムタム、フロアタム、クラッシュシンバル、ライドシンバルなどなど、たくさんの要素が有るから。それらをバランス良く収録するのは慣れないと確かに難しいかもしれない。

マイクはそれぞれのパーツに個別に立てると10本を超える事もあるが、最低でも3本使う。バスドラに1本、オーバーヘッド2本が基本。


バスドラム

バスドラムはドラムセットの中でも非常に重要! バスドラム用のマイクは毎年のように新しいマイクが発売され、定番と言われるマイクも変化する。かつてはEV RE20やSENNHEISERのMD421 が王道、その後オーディオテクニカATM25やAUDIXのD6、AKG D112、最近ではDPA4011c、SHUREのBETA52Aなどエンジニアの好みでさまざまなマイクが使われた。また、BETA91Aを中に突っ込んだり、外側にNS10Mのウーファーやヤマハのサブキック、ビンテージのノイマンC47FETを使ったり、リハスタではSM57やSM58も普通に使われている。「もはや定番など無い!」が正解。ちなみに僕のお薦めはSHUREのBETA52A+NS10Mのウーファー。

僕がエンジニア稼業を始めた頃には「マイクの向きはビーターの打面を向けてウラから狙う」とか「打面から5センチくらいのところで狙う」とかが王道だったが今そんなことする人いるのかなぁ......。

穴の奥にMD421、外側にD112 シュアーのBata52A
   

 

ゼンハイザーMD421

ATM25+MD421+MS10M

   

 

穴の前にD112、横にMD421

ヤマハから発売された「サブキック」という名前のマイク

   

ドラマーの中には自分のバスドラの中にマイクを仕込んじゃうツワモノもいる。

超絶技巧で有名なサイモンフィリップス氏はレコーディングの目に毎回、電ドラでヘッドを外してセットし直す。 バスドラのシェルに直接SHUREのBETA52Aをショックマウントで固定。ヘッドの外側にNS10Mで風圧と余韻を拾う。ちなみにバスドラの中のペイント缶は砂入りの重り。

ドラムの中にシュアーのBeata52A、外側にNS10M サイモンフィリップス氏と2ショット
   

位相はアタックを録る方のマイクを正相に、2本目のマイクはマイクを2本をほぼ同じ音量にセット、2本ともオンにして音を聴きながら位相を反転してみて結果の良い方にセットする。

 

   
Beta52A ダイアフラム(振動板)の位置がバスドラムの奥行きの真ん中より若干打面よりに設置する。
特に打面を直に狙う必要は無い。
MD421 ドラムヘッドに開口部があればマイクの半分がドラム内に入るくらいの位置にセットする。
もし他のマイクと一緒に使用する時は位相をチェックする。
NS10M ドラムヘッドから5センチ程度の場所にヘッドと平行にセットする。
普通のマイクよりゲインが高いので必要ならPADを使用する。
もし他のマイクと一緒に使用する時は位相をチェックする
   

※ バスドラムの内側にBeta52Aが置けない場合は上図で421のある場所にBeta52Aを置く。

※ NS10Mウーファーを使う場合はレベルがラインレベルなみにでかいので卓の受けレベルに注意

 

イコライザー

バスドラムを良い音で鳴らせるドラマーならBata52AがあればEQは不要。

しいて言うなら

低域の「ドッ!」って音は50Hzか100HZ(50Hzの方が重い低音感 )を+6db

低域をブーストした場合は中域の400Hzとか700Hzとかを-6db

ビーターのアタック音を強調したければ7.5KHzを+6db

EQ増減量はお好みで。 リハスタなどでSM57をバスドラに使う場合は同じポイントで倍くらいEQする。

 


オーバーヘッド

オーバーヘッドのマイクをシンバル用と思ってる人もいると思うが、僕の場合はタムやスネアも含め、ドラム全体を拾うマイクという扱い。なのでセットする場所もドラム全体がバランスよく拾える場所を探る。ドラムプレーヤー位置に座って手を上に伸ばしてちょっと届くか届かないかなってくらいの位置にセットする事が多い。割と見た目もシンメトリックでSNがセンター定位するようにゲイン設定する。

オーバーヘッド用のマイクは様々なものが使用されるがほぼ100%コンデンサーマイク。(リハスタとかでの収録だとSM57って事もあるにはあるケド、お薦めはコンデンサーマイク!!)ちなみに僕のお薦めはサンケンのCU41、無ければAKGのC414、それも無ければC451でも良い。DPA4006や4011、Blueの Baby Bottleも中々良い。

何故コンデンサーマイクを使うのか?コンデンサーマイクはその構造上、振動板に重いボビンやコイルがついていないので過度応答特性に優れアタック感や高域の周波数特性が格段に良いから。それに繊細なシンバルワークの時とかでも多彩な音色を美しく拾ってくれる。

 

.  
   

 

.  
   

 

イコライザー

200Hzでハイパスフィルタを入れる。以上。

 


メインのマイクはバスドラに1本、オーバーヘッド2本が基本だが、個別にスポットマイクを立てることもある。その場合はオーバーヘッドマイクに足してみて位相をチェックしてから音創りを行う。


スネアドラム

.  
SM57

SM57がスタンダードだがMD421も中々良い。最近ではコンデンサーマイクを使用するエンジニアも増加傾向。

Over Headのマイクと同時に鳴らしながら位相を反転してみると音が大きく変化するので気持ちよい方にセットする。

MD421

421でも57でも。

通常はSNの上側のマイクと逆位相にするが音で判断。

   
   

 

   

 

   

実のところドラマーの耳の高さくらいで打面の真上から良質の無指向性マイクでSNの打面を狙うと良い音がするので単発のサンプリングとかでは試す事も可能。オンマイクをトリガーにしてSNを叩いた時だけ合成ってのも曲によっては可。そうは言っても実際の楽曲の中での使用は中々難しいのでオーバーヘッドマイクをメインでオンマイクも使うってのが多い。

 

イコライザー

75Hzでハイパスフィルタを入れる。以上おしまい。

せっかくドラマーが深胴にしたりピッコロに変えたりシェルの材質の違うものを選んだり、つまりスネア自体を交換して曲にあった音系になるように工夫しているのでエンジニアは何もしないのが良い。

万が一ドラマーからもう少しアタックを強調できるかなぁと言われた時は7.5KHzと12.5KHzを適量ブーストする。

 


 

ハイハット

AKG C451やC414を使う事が多い。DPAの4011A、4011C、2011A、Earthworks SR20 なんてセレクションもある。

わざとラフな感じを出したい時はSM57やBeta57など を使うと荒くれ感が出る。ただし 繊細なシンバルワークは表現しにくい。

 

.  
   

イコライザー

200Hzでハイパスフィルタを入れる。もっと上までカットしても良い。

どうしてもEQしたい時は12.5KHzとか15KHzをわずかにブースト。

 


タムタム

.

 

 

始めに他のタムやスネアを叩いた時に変な共振が起こらない事を確認する。

タムタムのマイクはMD421を打面に対して45度の角度でセットする。

タムタムとの距離はかなり近め。(5センチは慣れたら離れ過ぎ)

センターではなくわりと端っこを狙う。

オーバーヘッドマイクを生かした状態で位相を反転させてチェックしてみる。
 →音色、低音感や余韻が気持ち良い方にセットする。

マイクはDPA4099やDPA4011でも良い。

 

.  
   

 

.  
   

 

.

 

 

 

 

始めに他のタムやスネアを叩いた時に変な共振が起こらない事を確認する。

フロアタムのマイクはMD421を打面に対して45度の角度でセットする。

タムタムとの距離は少し離す。(5センチ以下は近すぎ)

打面センターあたりを狙う。

オーバーヘッドマイクを生かした状態で位相を反転させてチェックしてみる。
 →音色、低音感や余韻が気持ち良い方にセットする。

マイクはDPA4011でも良い。

 

イコライザー

イコライザを試す前にオーバーヘッドマイクを生かした状態で位相を反転させてチェックしてみる。
 →音色、低音感や余韻が気持ち良い方にセットする。

20Hzでハイパスフィルタ。

アタックを強調したい場合は7.5KHzを+6db

中域400Hzとか700Hとかは-6db

低域160Hzとかは+6db

 

 


 

ここにあげたセッティング例はいずれもエンジニアのmu-の個人的主観による。

ドラム収録に関しては一家言あるご仁は沢山いる。別に喧嘩を売るつもりはさらさらないので、ま、そういう流派と思って欲しい。「ドラム録音」や「ドラムマイク」などキーワードを入力して検索すれば情報はあふれるほどあるので勉強したい人はそちらを参考に。 シュアーやDPAなど信頼出来るマイクの会社のWebにも参考情報は載っている。正反対の記述もいっぱいあるので判断は自分の耳でね!!

ドラムスの音に関して職業エンジニアは生音の状況を十分把握しつつ「自分が聴こえている音がそのまま録れてるのかどうか」より「演奏者やプロデューサーが望む音がそのまま録れてるのかどうか」を常に意識している。趣味の世界では自分の好きなように、仕事の場合はさまざまなアプローチと結果(録れた音)を知りつつ、その時々で最適なセッティングをトライして演奏者とプレィバックを聴いて判断する事が重要。

私、エンジニアのmu-は職業エンジニアです。これまでレコーディングでご一緒したドラマーで音にめちゃうるさい方々と言えば、ジェフポルカロ、ドンヘンリー、サイモンフィリップス、村上ポンタ秀一、山木秀夫、神保彰、則竹裕之、そうる透、菅沼孝三、島村英二、江口信夫、長谷部徹(みなさん敬称略ですみません)他多数、幸か不幸か日本人ではおそらく一番音にうるさいという噂の X JAPAN YOSHIKIさんは 一度も会った事が無い。

って言う訳で、アメリカ西海岸系の音を作りたい場合のマイクセットは上記のマイクセットでそこそこいけるハズ。演奏者が上手いのにそういう音にならないっていう場合mu-@mu-s.comまで連絡を!! わたしがサクっと録音させていただきます!!!

 

 


このページ気に入ってくれた方はご自由にリンクを張って下さい。
ご質問、コメントやご助言は
mu-@mu-s.comまでお願いします。