□ 初めての録音
かつて、音を正しく記録するには高い技術が必要だった。その為にレコーディングエンジニアという専門職が存在しギャラも中々高かった。
かつてのジャンボジェット機のコクピットには操縦士、副操縦士の他に航空機関士がのっていて常時エンジンの監視や調整を行っていたが、現在は航空機関士はいない、エンジンの監視や調整はセンサーやコンピューターが行い、そこに人が気を使う必要は無くなったからだ。
録音の世界も日進月歩で技術は進化し各スタジオに必ず複数名いたメンテナンスエンジニアはすでに絶滅した。 レコーディングエンジニアという専門職も今や風前の灯火。一般的な記録という意味では録音は誰にでも出来る時代。たとえば会議の内容の記録とかならスマホに始めから入ってるアプリ(ボイスレコーダーなど)で誰にでも出来る。自然音や環境音だって高価な録音機やマイクを使わなくても、あるいは素人が高価な録音機やマイクを使ったとしてもほぼ失敗なく可能。仮にプロが見て稚拙な録音(音が小さすぎたり,大きすぎて歪んでいたり)であっても事後のリカバリーもかなりの確率で問題無く出来る。
<Recording Hans On>何が難しくて何が簡単、どこに落とし穴があるかを知るには「まずはやってみる」事が大切だ。そこで、「録音」に興味を持っている学生に5分で軽く説明して録音機やマイクを持たせていきなり「初めての録音」を経験してもらう。
<事前の説明>
・スケジュール
13時20分〜ロケハン〜録音
14時20分までに戻って収録したものをパソコンに取り込む。・持って行く機材
好きなマイク2本、マイクケーブル、録音機(ZOOM H6 またはMR-1000)、単三電池(充電式を必要量)、ヘッドフォン、筆記用具
・機材の設定と録音方法
1)録音機に単三電池(充電式可)を入れる。
2)録音機の時計をあわせる。
3)録音フォーマットを決める(CDクオリティのWAVでも最高クオリティのDSDでも)
4)マイクを録音機につなぐ。
5)RECボタンを押してINPUT を確認する。(信号が来ない場合、ファントム電源のSWを確認する)
6)ヘッドフォンをつないで音が来てるか確認する。
7)試しに録音してみる。これで準備完了、とりあえず「初めての録音」行ってらっしゃい〜!
<録音機の説明>
とりあえずでも録ってみないとわからない事は沢山ある。
たとえば
・録音レベルが低すぎて目的の音と比べ雑音が大きく録れてしまった。
・録音レベルが高すぎて音が歪んで録れてしまった。
・うっかりリミッターが入ったまま録音してしまい不自然に撮れてる。
・風の音(?)が入ってしまった。
・目的の音よりも自分の声が大きく入ってしまった。
・マイクのハンドリングノイズがたくさん入ってる。
・せっかく2本のマイクで録ったのにステレオ感がイマイチ。
・etc. ftc.
ま、そういう失敗を経験しておくと次の録音の機会にとても役に立つ。また、だんだんと音質も判別出来るようになる。
<録音フォーマットと解像度の説明>
MR-1000はすでに製造終了だが最大解像度はDSDの5.6MHz、CDの128倍の解像度で記録する事が可能。CDクオリティ=クオリティが高いと思ってる方々もたくさんいるが、実はそうでもなく、ユーザーも供給側も昨今「ハイレゾ」に傾斜している。
ハイレゾとはハイレゾリューション(High resolution = 高解像度)の略称だが、オーディオの世界では、簡単に言えば「良い音で記録&再生する為の規格。」......で、ハイレゾの規格だが、JEITA(電子情報技術産業協会=電機メーカーの集まり)のハイレゾに関する規定は、「CDのフォーマットを越えるもの」。つまり44.1kHz/16bitを超える規格で記録されたもの。たとえば44.1kHz/24bitとかでもハイレゾ。一方オーディオ協会は96kHz/24bit以上をハイレゾと定義。米国においては「CD以上の音質で録音されたマスターから作成されたロスレスオーディオ」と定めら、音源については、マスターの製作方法にも規定が有る。
日本オーディオ協会の会長様は「1982年のCD登場以来、約30年ぶりの大きな革新。音楽ビジネスに一大転機をもたらす起爆剤になりうる」と熱い期待を寄せ、電機メーカ-やレコード会社各社も今が商機とばかり大騒ぎ。
CDの場合は厳格に定められたちゃんとした規格(通称レッドブック)があるが、音のダイナミックレンジに関してはCDの「16ビット」っていう規格は今となっては相当にショボイ規格と言える。
ダイナミックレンジをわかりやすく言うなら「一番小さな音と一番デカイ音の幅。例えばクラシック音楽の終盤で全員がフォルテでガンガン弾いてて最後の最後にシンバルとグランカッサがドカ〜〜〜ンと鳴る一番音量がでかいとこで歪まないように録音レベルをセットしたとして冒頭ピアニシモの部分、とても繊細に小さな音で演奏した部分が聴き取れるか? 」って事。通常の音楽CD「44.1kHz/16bit」という規格を周波数帯域/ダイナミックレンジで言うとおおむね96dB、24bitなら理論値で144dB、ダイナミックレンジの違いは48dBもある。bit数が24bitであれば圧倒的に細かく音の変化を捉えることが可能で、埋もれていた残響音などの非常に小さな音まで繊細に表現することができ、大きな音も歪むことなく録音可能って訳だ。じゃぁDSDは1ビットだからダイナミックレンジは僅か6dbしかない?って訳ではなく、DSDの場合ちょっと考え方が違うんで細かい説明は省くとして実質は可聴範囲で150dbくらい。
同じCD「44.1kHz/16bit」という規格でありながらハードもソフトもCDが登場した1982年から30年もたてば格段に進歩した。黎明期に収録されたCDの音量は最近のものと比較すると6db以上小さかった。CDの「44.1kHz/16bit」という規格内で表現出来る範囲は大きく広がっている。音量競争まで勃発している。そうは言ってもやはりメディアの限界は否めない。
スマホ用語「ハイレゾ」って何?っていうページに素人さんに説明するにはわかりやすい図があった。ただし、説明するにはわかりやすいけどスケールは1秒ではなく、せめて1/1000秒って書いて欲しかったが....。
ま、それはいいとして......
「High resolution = 高解像度」っていう切り口なら画像はわかりやすい。以下は1秒間の情報量で見た場合CDを1として24/96なら3.26倍、24/192なら6.52倍、SACDなら6.4倍、DSD5.6MHzなら12.8倍、AACなら0.18倍の解像度で画像で表すと以下のようになる。
AAC CD 24bit/96KHz. SACD 24bit/192KHz DSD 1bit/5.6MHz画像を半分や4分の1に縮小すれば違いはあまりわからないかもしれないが、倍にしたり4倍にすればその差はさらに顕著になる。
地上波デジタルを大画面のプラズマテレビで見るのと旧来のアナログ放送をブラウン管テレビで見るのの違いは誰が見ても歴然だが小さい画面で見れば大差ない。音の世界も同じようなものでどうでもいい再生装置で小さい音で聞くならハイレゾもmp3も大差ないが、ちょっとマシな再生装置で聴けば驚く程の差がある。ただし、要は中身の問題。60インチの最新4Kテレビで見たってキタナイ画像はキタナイ画像。旧来のCDでもすばらしい内容の物もあれば「ハイレゾ」な入れ物に入っていてもしょうもないコンテンツもありうる。
中身が素晴らしいとして、収録時には右下(DSD 1bit/5.6MHz )の解像度でクッキリハッキリ撮れてた場合でも、上真ん中(CDクオリティ)の解像度だと中身の形は保っているもののピントはボケぎみになっちゃうので、「CDよりもっと上の解像度のままリスナーの手元に届けよう」ってのが「Hi-Res」のコンセプトだ。
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